東京・港区で耳かき店の従業員だった女性と祖母の２人が殺害された事件の裁判員裁判が始まり、被告の男は起訴された内容を認めました。今後の裁判では、検察が裁判員裁判で初めて死刑を求刑する可能性があり、裁判員の判断が注目されます。

この事件は、去年８月、耳かき店の従業員だった江尻美保さん（当時２１歳）と祖母の鈴木芳江さん（当時７８歳）が東京・港区の自宅で刃物で刺されて殺害されたもので、店の客だった千葉市の元会社員、林貢二被告（４２）が殺人などの罪に問われています。東京地方裁判所で開かれた初公判で、林被告は「まちがいありません」と起訴された内容を認めたうえで「被害者の方にほんとうに申し訳ないと思います」と謝罪のことばを述べました。検察は冒頭陳述で「林被告は店で美保さんに出会って、長いときには１日に７時間以上、過ごすこともあった。美保さんを待ち伏せて付きまとうようになったが、逃げられたことで一方的に憎しみをつのらせた」などと指摘し、何の落ち度もない２人の命を奪った残虐な犯行だと主張しました。一方、弁護側は「被告は店への出入りを禁止されたあと眠れなくなるほど悩み、犯行当時は善悪を判断する能力が下がっていた。毎日、遺族に謝罪の手紙を書くなど深く反省している姿も見てほしい」と訴えました。男性２人、女性４人の裁判員たちは、緊張した様子で検察官や弁護士の話に耳を傾けていました。今月２５日に行われる論告で、検察が裁判員裁判で初めて死刑を求刑する可能性があり、裁判員がどのような判断を示すのか注目されます。判決は来月１日に言い渡されます。