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「親父が買ってくれた鍬(くわ)」
日期:2017-08-30 08:40  点击:347
 半世紀前、高校二年の二学期早々に、学習意欲喪失、成績不振から登校拒否を起こした。朝、「行ってきます」と出て、図書館で一日を過ごし、夕方帰った。不登校四日目、自分なりに考え抜いて退学を決意した。その夜、兄弟が寝静まるのを待ち、親父に言った。困惑した表情をわずかに見せた親父は多くは語らず、強く叱ることもしなかったが、こう言った。「いいだろう。ただし、もう一ヶ月だけ学校に行け。そして、学校生活に全力で取り組んでみろ。それでも決意が変わらなければ、退学して家の仕事を手伝うがいい。自分には七人の子どもに分けるほどの財産はない。ただお前たちが勉強したいんなら、どんなことをしてでも大学に行かせてやろう。それが、おまえたちに残すことができる財産だ」
 一ヵ月後、あの決意をすっかり忘れて、学校生活にのめり込んでいる自分がいた。この言葉は、働きながら夜学に通い、二十六歳で会社を立ち上げ、叩き上げの商売人だった親父が自分に残した遺産だ。
 西郷隆盛に、「児孫のために美田を買はず」という遺訓がある。「財産を残すと、子孫の精神が安逸に流れやすいからそのようなことはしない」という戒めである。
 親父は、「児孫のために美田を買えず」であったのだろうが、鍬だけは買ってやるから、後は自分の力で荒地を切り開き、田畑を耕せと教えてくれたのであろう。その鍬のおかげで、自分は今日までともかくも生きてこられたような気がする。そして、自分もまた、相変わらず美田を買えないままに、使い古したその鍬を二人の坊主に譲り渡した。今彼らがその鍬で汗を掻きながら田畑を耕している。
 
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