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この島でいちばん高いところ21
日期:2019-04-28 23:14  点击:278
 夜のうちは暗くて動けない。ユンジャたちは懐中電灯もなにも持っていない。あのテントの男もそれは知っているだろう。だから、夜は油断しているに違いない。
 夜が明ければ、彼は警戒をはじめるだろう。そうして、暗すぎれば動けない。
 だから、今だ。この夜が明ける瞬間しか時間はない。
 ユンジャは走った。これは賭だ。負けるわけにはいかないけど、ある意味、負けてもともとなのだ。矛盾しているけど、今はそうとしか思えない。
 どうせ、無事に船に間に合っても、事故で死んでいたのなら、今、ここに生きていることがおまけみたいなものだ。でも、どんなことがあっても、葛葉と桃子を死なせるわけにはいかない。
 だから、必死になって走った。少しずつ闇が薄まってきて、視界がはっきりとしてくる。
 砂浜に辿り着き、そこから林の中に入る。昼間、テントを見つけた方向に向かって歩き続けた。
 足下は露でぐっしょりと濡れていて、ひどく冷たかった。聞いたことのない、鳥の声がする。
 ユンジャは額の汗を拭った。
 ふと、足が止まる。そこだけ、土の色が変わっていた。わざと、落ち葉を掻き集めてあるのが、よけいに不自然だ。
 ユンジャはしゃがみ込んで、土を撫でた。明らかにそこだけ軟らかい。
 深く息を吐く。心でつぶやいた。
(聖……見つけた)
 たぶん、ここに彼女が埋められたのだろう。ユンジャはそう確信した。可哀想な聖。でも、あなたをここで眠らせたままにはしない。
 ユンジャはビーズのブレスレットを外して、そばの針葉樹の枝に留めた。
(あとで絶対、迎えにくるからね)
 土の中で眠っている聖に、ユンジャは約束した。ユンジャは約束を破らない。絶対に。
 今は時間がないのだ。
 そうして、また走り出す。遠くの方にテントが見えた。
 
 だれかに呼ばれたような気がして、葛葉は目を覚ました。
 夜はうっすらと明けかかっている。全身が汗でびっしょり濡れていた。
 横では桃子が身体を丸めるようにして、眠っていた。
 嫌な予感がした。声に出して呼んでみる。
「ユンジャ?」
 返事はない。
 
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08/24 20:15
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