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日本史の叛逆者55
日期:2019-05-24 23:04  点击:304
 館から火の手が上がったのは、入鹿の殺された翌日未明のことだった。
 夜明けを期しての総攻撃を考えていた将軍徳陀は、火の手を見て館への突入を命じた。
 裏と表と、両方の門が突き破られて、徳陀の兵が館の中に入った。
「待て、ここは通さぬ」
 猿手だった。
 逃げずに残ったのである。
「大臣家の臣として最後の意地を見せてやる」
 猿手は剣を振り回した。
 死を覚悟した猿手一人に、千を越す軍勢が圧倒された。
 数人を斬り倒して、返り血に染まった猿手は、しかし手傷ひとつすら負っていなかった。
 恐れた兵士は猿手を遠巻きにした。
 その間にも、炎は館を包んでいく。
 馬上で指揮を執っていた徳陀はあせった。
 蝦夷は、おそらく死んだのだろう。
 しかし、その死体をひきずり出して、市《いち》にさらさなければ、完全に勝ったとはいえないのである。
「わたしに任せろ」
 進み出たのは漢殿だった。
 槍を手にしている。
「あなた様が」
 徳陀は、漢殿が中大兄の異父弟である、ということしか知らない。
 漢殿は無言で槍を抱え、小走りに走った。
 その勢いに、兵士の輪が割れ、道が開いた。
 猿手は新たな強敵の出現に、剣をふりかぶった。
「とおーっ」
 気合いを発して、漢殿が槍を突き出したまま、突進した。
 兵士たちは見た。漢殿の槍が、まるで吸い込まれるように猿手の胸板を貫くのを。
「ぐわっ」
 さしもの猿手が、一太刀も漢殿にむくいることができなかった。
 猿手は倒れた。
 漢殿が槍を抜くと、兵士から歓声が上がった。
「急げ、蝦夷を引きずり出せ」
 徳陀は命じた。
 館の中に兵士が乱入し、首をつった蝦夷の死体のみならず、珍宝や書物の類いまで持ち出した。
(勝った)
 中大兄はその時初めて、勝利を完全なるものとして感じた。
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08/28 11:18
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