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日本史の叛逆者74
日期:2019-05-24 23:12  点击:293
「何故に、わが父をお討ちになったのです」
 遠智娘は目を真っ赤に泣き腫《は》らして抗議した。
「謀反のたくらみがあったからだ」
 中大兄は、そっぽを向くようにして、言った。
「うそ、父がそんなことを考えるはずがありませぬ」
「いつわりではない。その証拠に、日向が訴人した」
「日向の言葉など信じられませぬ」
「あの者は、そなたの叔父ではないか」
「父とは、生まれた母が違います。父も、あの者を嫌っておりました」
「——」
「日向は、父をねたんでいたのです。日向は、嘘を言ったに違いありません」
「黙れ、もう終わったのだ」
 中大兄は怒鳴りつけ、一転して猫撫で声で、
「それより、腹の子を大切にせよ。もうすぐではないか」
 と、言った。
「父を、父をお返し下さい」
 泣き叫ぶ遠智娘の顔が、突然苦痛にゆがんだ。
「どうした?」
 異変に気付いた中大兄はあわてて、遠智娘を抱き止めようとした。
 遠智娘はそのまま床に崩れ落ちた。
「誰かある、誰か」
 中大兄は叫んだ。
 産気づいたのである。遠智娘は、そのまま奥に運ばれ、非常な難産の末に、男の子を産み落とした。
 中大兄は喜んだ。
 女の子はいるが、男の子は初めてだったからだ。
 だが、遠智娘は死んだ。
 産後の肥立ちもよくなく、それに父の死、兄弟の死という出来事が重なったからだろう。
 しかも、さらに不幸が重なった。生まれてきた子供は、口をきくことができない身体だったのである。
「石川麻呂の祟りか——」
 さすがに中大兄も肩を落とした。この国では中大兄をはじめとして皇族も庶民も、こういうことは死霊の祟りであると深く信じていた。
 石川麻呂の財産はすべて国庫に没収されることになったが、その中で珍宝や重宝の類いにはすべて付箋がついていた。
「皇太子様のもの」
 付箋にはそう書かれてあった。
 それを知った中大兄は後悔し、訴人した日向を九州へ流すことにした。
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08/29 00:19
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