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日本史の叛逆者75
日期:2019-05-24 23:13  点击:258
 (一体、兄君は、どうして石川麻呂まで殺したのか)
 漢殿はそのことが、どうしても不可解であった。
 石川麻呂が謀反を企てていたなどとは、到底信じられないことである。
 石川麻呂は二人の娘を中大兄に嫁がせ、反抗する心などみじんもなかった。
 それなのに、どうして殺したのか。
(日向の訴えを信じたのか)
 いや、それも有り得ない。
 もし、信じたとしたら、日向に対する処罰はもっと過酷なものだったはずだ。
 つまり、朝廷は公式には、日向の訴えは讒言《ざんげん》だったという立場を取っている。だからこそ、日向を罰した。
 石川麻呂の謀反が本当だったとすれば、朝廷はむしろ日向を重く賞しなければならない。
 しかし、そうはしなかった。
 それは、日向の訴えを讒言と認定したからだ。
 だが、それならばそれで、日向をもっと厳しく罰するべきなのである。
 日向の言葉によって、石川麻呂以下一族の者が何人も殺された。
 その罪は大きく重い。
 それを中大兄は、九州への流罪という、比較的ゆるやかな措置で済ませた。
(やはり、兄君は知っていた)
 そう言わざるを得ない。
 いや、ひょっとしたら、もっと恐ろしいことも考えられる。
(いや、まさか、いかに兄君とはいえ、そこまではすまい)
 そう思いたかった。
 石川麻呂をおとしいれるために、日向に偽りの訴えをさせる。
 そして、それが真実ではないことを百も承知で、石川麻呂を討つ——そんなことをしたとは思いたくない。
「御主人様——」
 虫麻呂の声がした。床下である。
「どうだった?」
「やはり御推察の通りでした」
 虫麻呂は言った。
「そうか」
 漢殿は暗澹たる思いにとらわれた。
 そうだったのだ。
 中大兄は日向を使って、石川麻呂をおとしいれたのである。
(何ということだ)
 改革の理想は血にまみれた。
 所詮、血で得られた成果は、より多くの血を流すことでしか守られないのか。
(兄君は血に飢えておいでになる)
 漢殿はそれを痛切に感じた。
 これから先、中大兄はまっしぐらに突き進み、邪魔する者は蹴散らさずにおかないだろう。
(しかし、これでいいのか、本当に)
 漢殿は不安を打ち消すことができなかった。
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08/29 00:19
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