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日本史の叛逆者80
日期:2019-05-24 23:15  点击:286
 帝は怒りに燃えていた。
(后め、よりによって皇太子と密通するとは——)
 この手で、ひねり殺してくれる。
 そのことすら考えた。
 わずかな舎人《とねり》を連れて、帝は皇后のもとを急襲した。
「出て参れ」
 帝は衣服の乱れも気にせず叫んだ。
 女官たちは震え上がった。
「どうか、お気を鎮められますように」
「うるさい」
 帝は、なだめに来た女官を突きとばした。
 悲鳴が上がった。
「お待ち下さいまし」
 間人が出てきた。
 青白い顔に、固い決意の色が見える。
「おお、出て来たか」
 帝は獲物を見つけた猫のような目をした。
「ようこそ、お越し下さいました」
 間人は頭を下げた。
「何のために来たか、わかっておるか」
 帝は間人をにらみつけた。
「——はい」
「申し開くことがあれば聞こう」
「何もございません」
「そうか」
 帝は、怒りと笑いが入り混じったような表情で、一歩一歩、間人に近付いた。
 途中、舎人から剣を受け取り、鞘を払った。
 再び悲鳴が上がった。
「覚悟せよ」
 そのまま野獣のような雄叫《おたけ》びを上げて、帝は剣を大上段にふりかぶった。
 そして、その刃が皇后の脳天に振りおろされようとした、まさにその時——。
 飛来した石礫《いしつぶて》が帝の右手に命中した。
「ぐわっ」
 帝は剣を取り落とした。
「何者だ」
 右手を左手で押さえ、帝は叫んだ。
 答えはなかった。
 代りに、布を巻いて面体を隠した男が、帝と皇后の間に割って入り、皇后の手を掴《つか》んだ。
「さあ、早く」
 男は右手に持った長い槍で、あたりの舎人を威嚇しつつ、外へ出た。
 馬がつないである。
「さあ、参りましょう」
「どこへ?」
「とりあえずは、わが館にでも」
 そう言うと、男は間人を強引に馬に乗せ、自らもまたがった。
「——あなたは、ひょっとしたら、わが兄君では」
 間人は言った。
 中大兄と間人は、父も母も同じ兄妹である。
 しかし、覆面の男——漢殿は違う。
 父は新羅の王族なのである。
「——御存じでしたか」
 漢殿は言った。
「一度、お会いしたいと思っていました」
「いや、私のような者に、お会いになっても、何の得るところもありません」
「肉親には、得るところがあるから、会うのではありません」
 間人は笑顔で言った。
「それもそうですな」
 漢殿も笑った。
 そして、初めて親しく言葉を交したこの妹に、好意を持った。
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08/29 06:28
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