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日本史の叛逆者84
日期:2019-05-24 23:16  点击:269
「母上、それはなりませぬ」
 中大兄は不快感を露わにして言った。
「なぜです」
 前帝《さきのみかど》である母は不審の表情を見せた。
「言うまでもありません。あの者は、異国《とつくに》の血を引いております」
 漢殿《あやどの》を皇族に列するか、という問題である。
 難波の都を捨てるにあたって、中大兄は母に懇願した。
 母は中大兄には甘い。その願いなら大方のことは聞き届ける。
 今回のことは、言わば大きな貸しである。
 それがあるから、母は再び漢殿のことを持ち出したのである。
 しかし、にべもなく拒否された。
 母はむっとして、
「そなたはそう言うが、これは皇后の願いでもあるのですよ」
 娘であり、中大兄の妹でもある間人皇后は、あの一件以来、漢殿の味方だった。
 だが、中大兄はそのこと自体面白くない。
「だめです」
 中大兄は意固地になった。
 あとは母がいくら説得しても、中大兄は首を縦に振らなかった。
 大きな溜息をついて、ついに母はあきらめた。
「わかりました。では、その件は無かったことにしましょう」
「ありがとうございます」
「では、聞きますが、肝心なことはどうします」
 母は改めて厳しい視線を中大兄に向けた。
「肝心のことと申しますと?」
「決まっているでしょう。都が二つに分かれ、帝が有名無実のものとなった。このまま放っておくのですか」
「それは——」
「異国の使者も困るでしょうね。どちらへ使いを送るべきか。難波か、それともこの飛鳥か」
「飛鳥です。決まっている」
 中大兄は叫んだ。
 母はたしなめるように、
「難波には帝がいるのですよ、力がないとはいえ、帝は帝です」
「——」
「もし、帝が、われらをこころよく思っていない者共と結んだら、厄介なことになります。この国は二つに割れる」
「そんな者共がおりましょうか」
 中大兄は楽観していた。
 もし、そんな連中がいるなら、難波の帝のもとには、もっと大勢の家臣が残ったはずだ。
「いや」
 母は首を振った。
「人には、面従腹背ということがあるのですよ。そなたも、この国の天津日継《あまつひつぎ》となる身なら、こういう言葉ぐらい知っておきなさい」
「面従腹背——」
 母は意外に唐《から》の国の言葉を知っている。それは漢殿の父である新羅の王族から学んだものだろう。
 そう思うと、中大兄はその忠告を率直な気持で聞く気になれなかった。
「とにかく、何か方策を考えなさい。このままではいけません」
 母は最後に念を押した。
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