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日本史の叛逆者94
日期:2019-05-24 23:21  点击:295
 突然、その時に、刀を振り上げた男がけものじみた声をあげた。
(——!?)
 一旦は死を覚悟した大海人だが、その頭上に刺客の刃はついに振り下ろされなかった。
(何が起こったのだ!?)
 その疑問は、すぐに解けた。
 刺客は前のめりにゆっくりと倒れてきた。
 大海人は体を動かした。
 大地に倒れ伏した刺客の背中には、太い矢が深々と突き刺さっていた。
 他の刺客たちが驚きに我を忘れたところへ、矢が次々に飛来した。
 たちまち二人が倒れ、三人が傷付いた。
「逃げろ!」
 男たちは口々に叫んで、蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
 大海人は剣を拾って立ち上がった。そこへ、武装し鎧を身につけた数騎の男たちが近付いてきた。
 騎乗の男たちは、大海人の近くまで来ると先頭の男の指示で一斉に馬を降り、大地に跪《ひざまず》いた。
「何者だ」
 指揮を取る男はまだ若かった。
 頭を剃り立てている。
 眉は薄く目は細い。が、全体に精気がみなぎっている。
「わたくしは道行《どうぎよう》と申します」
 男は言った。
「道行? 法師か?」
 大海人はもう落ち着きを取り戻していた。
「仰せの通りにございます」
 道行は答えた。
「この者たちは?」
 大海人は、道行の背後に控えている武装した男たちのことを問うた。
 数えてみると七人いる。
「わたくしの配下にございます」
 大海人は、ふっと笑って、
「近頃の法師には、剣や弓を持った配下がいるのか」
「——」
 道行は顔を伏せた。
 大海人はあらためて観察した。
 道行たちの身につけている武具は、この大和のものとは微妙に違っていた。
 そして弓の形に、大海人はかすかな記憶があった。
「そなたは新羅の者だな」
 大海人は決めつけた。
「はい」
 顔を上げて道行は認めた。
「帰化人か」
「いえ」
 道行は大きく首を振った。
「——?」
「この国に住まいは致しておりますが、心は母の国にございます。したがって帰化とは申せますまい」
 道行は、ほとんど抑揚のない声でそう言った。
「なるほど、心は常に新羅にあり、か」
 大海人は次々に疑問がわいてきた。
「先程、わしを襲ったのは何者だ?」
「おそらくは百済の手の者、百済の者に雇われた者でございましょう」
 道行は淀みなく答えた。
「百済? なぜ百済がわしを狙う?」
 大海人は首を傾《かし》げた。
 道行は大海人の目を正視して、
「おわかりのはずでございます」
「——」
 大海人は言葉に詰った。ややあって、
「わしが新羅の血を引く者だからか?」
 大海人の言葉に、道行は黙ってうなずいた。
「だが、それにしても、わしを狙うとは——」
 やり過ぎではないのか、と大海人は言いたかった。
 仮にも皇子の身である大海人を、異国人が討てば大問題になる。友好が損なわれるどころではない、下手をすれば戦争だ。
「それゆえ、この国の者を使ったのでしょう。物盗りの仕業に見せかければ、何事もうまく行くと踏んだのでございましょう」
「そうまでして、何故にわしを亡き者にしたい?」
「わが新羅と百済は長年の宿敵。今も海の向うでは戦《いくさ》が続けられております」
「だが、それは海の向うのことであろう」
「この国がどちらに味方するかで、勝敗は決まります」
 道行は言った。
「それで、わしを狙ったというのか——」
 大海人は嘆息した。
 迷惑である。
 大海人にとっては、新羅が勝とうが百済が勝とうが、どうでもいいことである。
「兄」の中大兄は百済を好み新羅を嫌っているが、大海人は正直どちらでもいい。
 確かに父は新羅人かもしれない。
 しかし、それだけのことで、大海人には新羅に対して深い思い入れはない。
 だが、道行は次に思いがけぬことを言った。
「わが国王も、皇子様には格別の思し召しがございます」
「なにをたわけたことを」
 大海人は、せせら笑った。
「——新羅国王ともあろう御方が、わしのことなど知るはずはないではないか」
 そう思うのも当然である。
 海の向うに住んでいる王が、皇族でもなかった自分のことなど知るはずがないだろう。
「いえ、仰せられております。——いつの日か桃樹の下で酒を酌み交したいものだ、と」
「なに」
 大海人は愕然とした。
 その言葉には、確かに覚えがあったのである。
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