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日本史の叛逆者145
日期:2019-05-24 23:46  点击:270
 帝はしばらく気付かなかった。
 しかし、いくら何でもおかしいと思ったのは、勢子の「竹麻呂」が先程から走り詰めに走っていることだ。
 随分と森の中を駆けているのに、獲物の白鹿はおろか他の勢子の姿も見えない。
「待て、とまれ」
 帝は叫んだ。そして、自ら手綱を引きしぼって、馬をとめようとした。
 驚いた馬は棹立ちになった。
 帝は悲鳴を上げて、馬にしがみついた。
 手綱をもぎ取られた形の早足は、急いで馬をなだめた。
「この無礼者めが」
 帝が鞭でぴしりと早足の顔を打った。
 早足の顔から血が流れた。
「お静まり下さい」
 低いが、よく通る、毅然とした声がした。
「何者だ」
 帝は、動揺さめやらぬ馬にしがみつくようにして、言った。
「わたくしです」
 大海人が前に出た。
 右手に槍を持ち、静かに帝を見つめていた。
 その表情には、深い悲しみの色があった。
 帝は、愕然として大海人を見た。
「何、何をしに参った」
 大海人の頭に、ちらと別の考えが浮かんだ。
(もし、ここで日唐同盟のことを翻意させることが出来れば——)
 だが、それは所詮意味のないことだと、大海人は気が付いた。
 そう要求すれば帝はうなずくだろう。だが、それはこの場だけのことだ。
 宮殿に戻れば、たちまち前言をひるがえし、大海人たちの追討を命じるだろう。
 そうなっては、もはやこの国を救うことは出来ない。今を逃せば、二度と好機はないのだ。
「——この国の安泰のために、死んで頂く」
 大海人はとうとうその言葉を吐いた。
「なんだと」
 帝は怒りを露《あらわ》にして、
「気でも狂ったか、朕はこの国の王であるぞ」
「わかっている。だからこそ死んで頂くのだ」
 その言葉と同時に、飛電のように鋭く早い槍が、帝の腹に突き刺さった。
「お、おのれ、逆徒め——」
 帝は槍の柄を掴んで、苦痛のうめきをあげた。
 大海人は、勇を振りしぼって、槍を左にねじり込んだ。帝はたまらず馬から落ちた。
 どすんという大きな音がした。
 帝は大地に叩きつけられていた。槍はその衝撃で腹から抜けていた。
 気の遠くなるような激痛にもかかわらず、帝は傷口を押さえ、這うようにしてその場を逃れようとした。
 その周りを、早足ら栗隈郷の若者四人、そして虫麻呂が囲んだ。
「助けてくれ、頼む」
 行く手をさえぎる虫麻呂に、帝は取りすがった。
 だが、虫麻呂は巌《いわお》の顔を変えない。
 大海人は、その背後で槍をかまえた。
 こうなったら、出来るだけ苦しませずにあの世に送ることが、慈悲というものである。
(成仏されよ)
 大海人は、帝の項《うなじ》を一突きした。
 ここは急所である。
 帝は獣じみた叫び声を上げて硬直し、大海人が槍を引き抜くと、ゆっくりと仰向けに倒れた。
 大海人は大地に静かに槍を置くと、前に進んで帝の死に顔を見た。
 その目は、かっと見開かれ、その顔には激しい恐怖が刻まれていた。大海人は悲しげにその場に跪《ひざまず》くと、手をのばして帝の目を閉じさせた。
「——終わったな」
 深い溜息と共に、大海人は目を閉じて、自ら手にかけた兄、いや本当は弟の冥福を祈った。
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