遠野物語12
日期:2019-08-25 10:07 点击:282
一二 土淵村山口に新《につ》田《た》乙《おと》蔵《ざう》といふ老人あり。村の人は乙爺といふ。今は九十に近く病みてまさに死なんとす。年頃遠野郷の昔の話をよく知りて、誰かに話して聞かせおきたしと口癖のやうに言へど、あまり臭ければ立ち寄りて聞かんとする人なし。処々の館《たて》の主の伝記、家々の盛衰、昔よりこの郷に行なはれし歌の数々を始めとして、深山の伝説またはその奥に住める人々の物語など、この老人最もよく知れり。(注 惜しむべし、乙爺は明治四十二年の夏の始めになくなりたり)


