遠野物語38
日期:2019-08-25 10:23 点击:266
三八 小《を》友《とも》村の旧家の主人にて今も生存せる某爺といふ人、町より帰りにしきりに御犬の吠ゆるを聞きて、酒に酔ひたればおのれもまたその声をまねたりしに、狼も吠えながら跡より来るやうなり。恐ろしくなりて急ぎ家に帰り入り、門の戸を堅く鎖して打ち潜みたれども、夜通し狼の家をめぐりて吠ゆる声やまず。夜明けて見れば、馬屋の土台の下を掘り穿ちて中に入り、馬の七頭ありしをことごとく食ひ殺してゐたり。この家はその頃より産やや傾きたりとのことなり。


