心を新たにして、昭和五十九年、つまり1984年の年賀状に何を書くかについて考えてみよう。
今回は、選ぶのが難しかった。|いかにも《ヽヽヽヽ》上手にできているのも多かったが、それよりも「個人的には深いイミがある」といったものに当りがあったように思う。
早い話が、普段バカばっかし言ってるような男が、年賀状にかぎって『謹賀新年』などと書くと、そのほうがヘタに考えたものよりおもしろいということになってしまうのだ。
萬流のお稽古は、よくよその雑誌にあるような「そのまま使えるネズミの図案集」などとは異る。名作をそのまま引用してウケようなどと思ってもダメで、最終的に「自分らしい」しかも「相手によろこばれる」ものを、オリジナルで考えるのが|萬心《まんごころ》あふれる正しい年賀状といえよう。
では、まず、ラジカルなやつからいこう。
・本村洋介『あとで電話するけんね!』(梅) そんなら出すなと言えないところが、年賀状の不思議さなのだなぁ。
・新屋健志『顔、忘れちやったけど……今年もよろしく』(梅) 『忘れちゃった』|からこそ《ヽヽヽヽ》出すという気もするし……。
・広田留美子『以下同文』(梅) これも、妙にナットク。ただしこれ、同巧多数。広田君は運がよかった。
・樫原辰郎『関東の方では、あけましてお萬でとうと言うんだそうだ』(梅) 昨今の萬事情を早速ネタにしているな。
非常に単純なコピーだが「そこを買ってほしい」という気持で書いているもの。
・田中宏和『おれは、出したからな』(梅) 本人の言う通りだ。出したか出さないかは、後々のもめごとの原因にもなる。しかし、出すタイミングもかなり重要である。
・門田陽『おれ若いから早目に出しちゃった』(梅) この場合、早目のほうが好まれると思う。
すごいのがあったぞ。
・|十万萬千代《じゆうまんまちよ》(本名である)『知り合いのおばあさんのところに来た三通の年賀状のうち二通は暮れに死んだ人からのものだった』(毒) こんなコト、年賀状に書くなッ。コワイじゃないかッ。
・山口正明『コンロのおなべにおぞうにがはいってます。あたためて下さい。おせちとミカンはテーブルの上。タバコの火に気をつけてね。じゃあ行ってきます。P.S.あけましておめでとう。今年もよろしくね』(竹) 創作もののなかでは山口君の好調がめだった。
おっと、何かをくにゅっと踏んだような気がしたが「名取」のバッジだった。山口君もついに今週で目出たくも名取第三号となりました。よかった。
一方、スーパーリアリズムからいくつか選んでみる。
・河野八重子『今年は萬流をやめることに致しました。先生、番頭さんの御多幸をお祈り致します』(梅) モンクの多いので有名な河野君ならではの技。
・新見光夫『今年は必ず返します』(梅) ただこれだけ。なんかブラックな香りでしょ。
では、超マチガイのコピー。
・花岡邦彦『十月十日生れ』(毒) よいか、花岡君はじめ同巧作の諸君。「トツキトーカ」が本当としたら、元旦製造の人類は、十一月十日に誕生するのだよ。
ついでだが、十一月十日は、家元生誕記念の「御萬の日」だったね。
「い、家元ォ! お言葉ではございますが、最新医学では元旦にタマが当るとやっぱり十月十日にはじけることになっておりますのですよ……」
だからさ、まあさ、アハハハ……。
今回は、選ぶのが難しかった。|いかにも《ヽヽヽヽ》上手にできているのも多かったが、それよりも「個人的には深いイミがある」といったものに当りがあったように思う。
早い話が、普段バカばっかし言ってるような男が、年賀状にかぎって『謹賀新年』などと書くと、そのほうがヘタに考えたものよりおもしろいということになってしまうのだ。
萬流のお稽古は、よくよその雑誌にあるような「そのまま使えるネズミの図案集」などとは異る。名作をそのまま引用してウケようなどと思ってもダメで、最終的に「自分らしい」しかも「相手によろこばれる」ものを、オリジナルで考えるのが|萬心《まんごころ》あふれる正しい年賀状といえよう。
では、まず、ラジカルなやつからいこう。
・本村洋介『あとで電話するけんね!』(梅) そんなら出すなと言えないところが、年賀状の不思議さなのだなぁ。
・新屋健志『顔、忘れちやったけど……今年もよろしく』(梅) 『忘れちゃった』|からこそ《ヽヽヽヽ》出すという気もするし……。
・広田留美子『以下同文』(梅) これも、妙にナットク。ただしこれ、同巧多数。広田君は運がよかった。
・樫原辰郎『関東の方では、あけましてお萬でとうと言うんだそうだ』(梅) 昨今の萬事情を早速ネタにしているな。
非常に単純なコピーだが「そこを買ってほしい」という気持で書いているもの。
・田中宏和『おれは、出したからな』(梅) 本人の言う通りだ。出したか出さないかは、後々のもめごとの原因にもなる。しかし、出すタイミングもかなり重要である。
・門田陽『おれ若いから早目に出しちゃった』(梅) この場合、早目のほうが好まれると思う。
すごいのがあったぞ。
・|十万萬千代《じゆうまんまちよ》(本名である)『知り合いのおばあさんのところに来た三通の年賀状のうち二通は暮れに死んだ人からのものだった』(毒) こんなコト、年賀状に書くなッ。コワイじゃないかッ。
・山口正明『コンロのおなべにおぞうにがはいってます。あたためて下さい。おせちとミカンはテーブルの上。タバコの火に気をつけてね。じゃあ行ってきます。P.S.あけましておめでとう。今年もよろしくね』(竹) 創作もののなかでは山口君の好調がめだった。
おっと、何かをくにゅっと踏んだような気がしたが「名取」のバッジだった。山口君もついに今週で目出たくも名取第三号となりました。よかった。
一方、スーパーリアリズムからいくつか選んでみる。
・河野八重子『今年は萬流をやめることに致しました。先生、番頭さんの御多幸をお祈り致します』(梅) モンクの多いので有名な河野君ならではの技。
・新見光夫『今年は必ず返します』(梅) ただこれだけ。なんかブラックな香りでしょ。
では、超マチガイのコピー。
・花岡邦彦『十月十日生れ』(毒) よいか、花岡君はじめ同巧作の諸君。「トツキトーカ」が本当としたら、元旦製造の人類は、十一月十日に誕生するのだよ。
ついでだが、十一月十日は、家元生誕記念の「御萬の日」だったね。
「い、家元ォ! お言葉ではございますが、最新医学では元旦にタマが当るとやっぱり十月十日にはじけることになっておりますのですよ……」
だからさ、まあさ、アハハハ……。