さて、「近所の喫茶店」のコピーである。
今回も、「近所の」という三文字に踊らされて、「近所」ということをコンセプト(概念。転じて、広告用語としてはアイディアの核になるテーマのことを言うようになっている)にした塾生が多かった。「パジャマ姿で」とか、「怒鳴れば家に聞こえます」とか、である。
そういうことを問題にしていたのではない。
要するに、有名な××などという喫茶店ではなく、任意の、全国的には名前も知られていないような「とある喫茶店」のコピーを書いてほしかったのだ。
これがうまくいくと、諸君のコピーが即座に「実用」に使えるではないか。この、「実用」になるヨロコビを、塾生諸君に味わってもらおうという親切な|萬心《まんごころ》で出した宿題だったのです。
実は、家元も、行きつけの「原宿・レオン」という喫茶店のコピーを無料で頼まれたことがあって、『従業員がよく奥の椅子に腰かけてレオンのコーヒーをしみじみと味わっております』というような(正確には忘れた)コピーを書いてやったことがあった。
ところが、なんと、一行一千万円の噂さえある家元のコピーが、没になってしまったのであった。もったいないやら口惜しいやらで、バカモノ、レオンの店長! いつか使えよ、なのである。お願い! 使ってね、なのだ。
「おいたわしゅうございます」
それではとにかく、その、実用になりそうな「実在の店」をとりあげたものから見ていこう。
・万城目充『ゆったりとしたスペース、豊富なメニュー! 漫画や雑誌がどっさり!! だから潰れました』(梅) これには、中央区新川の「珈琲館」というスタンプが押してあった。
・平岡清美『浩宮様御学友御用達店』(梅) なんとかして立派に見せようという心意気を買う。
・河野芳樹『実を粉にしていれたコーヒーです』(梅) 中野の「サムシン・エルス」のマスターが代筆した由。実用の始まり。
・若生良一『大作コーヒーのマスターはモルモン教徒にぱんのヘタをなげつけた』(梅) ちっとも広告にはならぬが、おもしろかった。話の種になる。
・石塚圭一『アレに見えるは徳間音工のカレンダーじやないか』(毒) 家元んとこの前の前の助手と同姓同名だが、どのみちバカなやつではある。ガンバレ。
・大沢郁子『10年前の郷ひろみ来店の熱狂ぶりが今もありありと壁の額にのこる店』(梅) わかるなぁ。
・加野典子『カタギの客お断り!』(梅) 大阪西成区に、ほんとに、キッサ「極道」ってあるんだと書いてはあるが、本当かなぁ。本人、自信たっぷりだけど。
・船山満『文学、音楽、芸術……ああ、スケベしたい』(梅) これは、名曲喫茶らんぶる(高田馬場)のためのコピーらしい。
・南賀文隆『日本最西北端の喫茶店』(竹) 石川県珠洲市という土地がもう“日本最西北端”なのだという。なるほどねぇ。
・冨澤淳『珈琲に倫理を』(梅) あんだけ倫理が流行したんだから、いいかもしれない。東銀座の「ブラジレイロ」のためのコピーだという。
・鈴本康敬『惜しいあの方、美味しい珈琲』(竹) これは、青山斎場(つまり葬儀場)の前にある喫茶店「ウエスト」用。家元の事務所のすぐそばでもある。
・諏訪克己『トルコ帰りに骨休め』(梅) 吉原の近くの「大門」という店。実際にこんな貼り紙があると「つい」ということもありそうだ。
「つまり、コーヒーを飲んでいて、貼り紙を読んで……|つい《ヽヽ》でございますね。フッフッフ」
今回も、「近所の」という三文字に踊らされて、「近所」ということをコンセプト(概念。転じて、広告用語としてはアイディアの核になるテーマのことを言うようになっている)にした塾生が多かった。「パジャマ姿で」とか、「怒鳴れば家に聞こえます」とか、である。
そういうことを問題にしていたのではない。
要するに、有名な××などという喫茶店ではなく、任意の、全国的には名前も知られていないような「とある喫茶店」のコピーを書いてほしかったのだ。
これがうまくいくと、諸君のコピーが即座に「実用」に使えるではないか。この、「実用」になるヨロコビを、塾生諸君に味わってもらおうという親切な|萬心《まんごころ》で出した宿題だったのです。
実は、家元も、行きつけの「原宿・レオン」という喫茶店のコピーを無料で頼まれたことがあって、『従業員がよく奥の椅子に腰かけてレオンのコーヒーをしみじみと味わっております』というような(正確には忘れた)コピーを書いてやったことがあった。
ところが、なんと、一行一千万円の噂さえある家元のコピーが、没になってしまったのであった。もったいないやら口惜しいやらで、バカモノ、レオンの店長! いつか使えよ、なのである。お願い! 使ってね、なのだ。
「おいたわしゅうございます」
それではとにかく、その、実用になりそうな「実在の店」をとりあげたものから見ていこう。
・万城目充『ゆったりとしたスペース、豊富なメニュー! 漫画や雑誌がどっさり!! だから潰れました』(梅) これには、中央区新川の「珈琲館」というスタンプが押してあった。
・平岡清美『浩宮様御学友御用達店』(梅) なんとかして立派に見せようという心意気を買う。
・河野芳樹『実を粉にしていれたコーヒーです』(梅) 中野の「サムシン・エルス」のマスターが代筆した由。実用の始まり。
・若生良一『大作コーヒーのマスターはモルモン教徒にぱんのヘタをなげつけた』(梅) ちっとも広告にはならぬが、おもしろかった。話の種になる。
・石塚圭一『アレに見えるは徳間音工のカレンダーじやないか』(毒) 家元んとこの前の前の助手と同姓同名だが、どのみちバカなやつではある。ガンバレ。
・大沢郁子『10年前の郷ひろみ来店の熱狂ぶりが今もありありと壁の額にのこる店』(梅) わかるなぁ。
・加野典子『カタギの客お断り!』(梅) 大阪西成区に、ほんとに、キッサ「極道」ってあるんだと書いてはあるが、本当かなぁ。本人、自信たっぷりだけど。
・船山満『文学、音楽、芸術……ああ、スケベしたい』(梅) これは、名曲喫茶らんぶる(高田馬場)のためのコピーらしい。
・南賀文隆『日本最西北端の喫茶店』(竹) 石川県珠洲市という土地がもう“日本最西北端”なのだという。なるほどねぇ。
・冨澤淳『珈琲に倫理を』(梅) あんだけ倫理が流行したんだから、いいかもしれない。東銀座の「ブラジレイロ」のためのコピーだという。
・鈴本康敬『惜しいあの方、美味しい珈琲』(竹) これは、青山斎場(つまり葬儀場)の前にある喫茶店「ウエスト」用。家元の事務所のすぐそばでもある。
・諏訪克己『トルコ帰りに骨休め』(梅) 吉原の近くの「大門」という店。実際にこんな貼り紙があると「つい」ということもありそうだ。
「つまり、コーヒーを飲んでいて、貼り紙を読んで……|つい《ヽヽ》でございますね。フッフッフ」