再び重右衛門日記
十月七日
去年の今日、小野浦の港を出でしを思う。遂に一年、この大海に漂いたり。長き長き一年なりき。苦しき悲しき一年なりき。されどこの苦しき漂流も、やがて終わるべし。吾《わ》が手首に黒き斑点出でし故《ゆえ》なり。吾《われ》も又、常治郎と同じくこの黒き血を切り出さむとは思わず。生くるに倦《あ》きたればなり。
松の木立に手を振りて居しお琴思われて悲し。お琴も甚一も達者なりや。重二郎も駈《か》けまわり居るべし。
海嶺100
日期:2020-02-28 13:22 点击:2362


