ホテルを最大限に利用してラブアフェアを楽しむには、なによりも「よそ行き顔」をすることがポイントです。渋谷のラブホテルへ行って、セックスだけをする楽しみ方とは、ひと味もふた味も違った心構えで取り組んでほしいものです。
たとえば、セックスそのものについても、それは単に、お互いの性欲を解消し合うといったものではなく、生理的、精神的、つまり性的な喜びを、互いに高め合うこと、という考えに立ってほしい、と思います。
ボクは、精神的な結びつきも、肉体的な結びつきも、どちらかが上位でもう一方が下位にある、というようなものではない、と思っています。精神的な高まりも、肉体的な高まりも、どちらも同じように価値がある、ということですね。
ただし、「高め合う行為」とはいっても、それは、あくまでも「楽しさ」を伴ったものでなければなりません。「汗水を流して必死になって」高め合うのでは、せっかくの楽しみが、シンキ臭くなりますね。もちろん、「よそ行き顔」どころではなくなります。
こうした「純文学的」「ラブホテル」「六畳一間」的な状況を、回避するための注意事項を考えてみましょう。
基本的に、セックスは、男のコが女のコに奉仕してこそ成功する、ということを念頭においてください。恋愛においては、男のコはみんな、ナイトでなければならない、ということ同様、この鉄則を守ってほしいですね。男性の生理的機能という事情で、セックスは「男のコが最後までいってしまうこと」によって、とりあえずの終結を迎える営みなわけですから、その区切りをコントロールできる立場にいる男のコの側が、二人の営みそのものをコントロールし、進行したほうがいいのは、当然です。
女のコが主導権を握り、徹底的に男のコに奉仕する形でのセックスも、ありえないわけではないでしょうが、これでは、女性はふいに終結を迎えるようになり、二人のリズムはうまく合わせられません。それに、なんだかソープランド嬢とお客さんの関係みたいにも、なっちゃいます。
男のコがビギナーの場合も、二人のリズムをうまく合わせられないケースはあります。キャリア不足が、引き起こす悲しい事態ですが、「研修期間」にはありがちなこと。しばらくは、しようがないでしょうね。
でも、男のコが女のコに奉仕する、というのは表面的な、便宜上のことというよりも、むしろ性愛構造上の原則なのですよ。男のコは、自分を律しながら、女のコに仕え、女のコの反応を観察し、それが自分自身の喜びになってフィードバックしてきて、おまけにそうすることで、二人のセックスそのものをコントロールすることもできるからです。
次に挙げる点は、お互いに、事前に、自分の体を清潔にしておく、ということです。
爪は短く切っておく。男はヒゲを剃《そ》っておく。体は全身くまなく洗う。足の指の間だって、もしかしたら、ペロペロちゃんするかもしれないんだから、忘れずに洗う。もちろん、お互いの一番微妙な部分は特に、念入りに磨いておく。
でも、まれには例外もあります。男のコのなかには、
「彼女の腋《わき》の下の匂《にお》いがたまらん!」
という人もいるでしょうし、さらには、
「匂いのある部分が好きだなあ」
とかっていう人もいるようです。それに、女のコのなかにも、
「汗の匂いのする彼に抱かれると、ボーッとなっちゃうんです」
というタイプもいるみたいですからね。
こういう場合は、お互いに情報交換しておいて、適宜対応すべきでございましょう。
要は、一緒に寝るとき、気持ちいいように配慮するということですね。ボクはやっぱり、シャワーを使い、耳の中もお掃除して、歯も磨いたあとで、ペロペロちゃんやグリグリちゃんをしたほうが、いい気分になれると思いますね。
「いい気分」の演出として、忘れがちなことに、室内での男・女のやるべきサービスがあります。これは、ある程度、男女で「分業」したほうがいいのかもしれません。
お風呂《ふろ》に入るのは、女のコを先にしたほうがいい、と思いますね。ちょっとした理由があるんです。
女のコが先にバスを使っている間に、男のコのほうがベッドのカバーを取っておけるからですね。やはり、セックスをリードするのは、あくまでも男のコですから、ベッドカバーを取るというスタートは、彼の仕事だからです。また、あとから彼がバスルームから出てきたときに、女のコが先にベッドに入っていると、実際以上に、彼の目からはあなたのことがかわいく見えたりする利点もあります。首だけをチョコンと出して、白い毛布にくるまれている女のコって、白クマちゃんのようで、思わず、ドキッとしちゃうでしょう。
また、男はベッドカバーを取るほかに、バスルームのドアのところに、女のコのためにスリッパを出しておいてあげるとか、洗面所のところにバスローブを用意しておいてあげるとか、そのくらいのマナーを守るといいかもしれません。
一方、女のコのほうも、何もしないのはいただけませんね。あとから入ってくる男のコのために、自分が使ったバスタブのお湯を抜いて、きれいにしたら、新しいお湯を入れてあげておいてください。でも、こういうことが、できてない女のコって、意外と多いんですよね。
さらに、男のコがバスルームに消えたら、二人の脱いだ衣類を、ハンガーにかけてクローゼットに収納するとか、細かいことにも目を配ってほしいものです。
バージンではない、ということは、一応、彼としてもわかっているのですから、必要以上に恥ずかしがられると、かえって興醒《きようざ》めします。女のコは、初めから大股を開いて、マグロのように横たわってさえいなければ、むしろ明るく振るまったほうがいいでしょうね。とにかく、ごく自然にやったほうがいい。
それと、男のコの技術にかなりの難があったとしても、それに合わせてあげる、ということも、女のコには必要です。
「もっと深く入れて」
「もっと激しくできないのォ?」
などといって、立ち直れない男のコを作る愚は避けましょう。だれしも、最初から上手な男はいないんです。稚拙である、ということは、その男のコが初々《ういうい》しいということだ、と無理にでも思って、そういうことばが口をついて出そうになるのを、理性でおしとどめてください。男がヘタであればあるほど、あなたには理性が十分、残っているはずです。なぜって、あんまり、感じ始めていないのですから。
男のコにいっておきたいのは、
「基本的には、荒々しいセックスは、上手なセックスではない」
ということです。
「インサートする前に、一時間くらい、ゆっくりと愛撫《あいぶ》するようなセックス」
こそが、女のコの喜べるセックスだと心がけることが必要なのかもしれません。それも、汗ベトベトな感じではなく、あくまでも、ゆっくりゆっくり、たんねんに、ガラス細工を扱うような感じで愛撫するのです。中に入ってからも、
「激しいピストン運動が大好き」
という女のコは、性的に開発途上の場合がほとんどでしょう。本来は、
「ていねいなグリグリちゃん」
とかですね、
「カレが当たる中の壁面が、微妙に変わるようにする」
とか、こういうことのほうが、なによりも大切です。
女のコのほうも、
「ステキだわ」
と思ったら、感じたことを素直に、声に出していうべきです。
「ああ、いいわァ」
ただし、あんまりヒーヒーと大声を出してしまうのも考えものです。男のコによっては、声の大きい女のコなんてイヤ、という人もいますから十分にケアしてください。
さてさて、このように、セックスの渦中《かちゆう》にあっても、男のコと女のコは、かくなる駆け引きをやっているわけです。実に複雑で、素晴らしいゲームじゃないですか。
シティーホテルを舞台に演じられる「よそ行き顔した恋愛」——これは、いまのあなたの生活に強烈なアクセントをつけ、恋愛を、人生をリフレッシュするに違いありません。