行业分类
薤露行: 一 夢(4)
日期:2021-01-10 23:29  点击:337

「わが冠の肉に喰(く)い入るばかり焼けて、頭の上に衣(きぬ)擦(す)る如き音を聞くとき、この黄金の蛇はわが髪を繞(めぐ)りて動き出す。頭は君の方(かた)へ、尾はわが胸のあたりに。波の如くに延びるよと見る間(ま)に、君とわれは腥(なまぐ)さき縄にて、断つべくもあらぬまでに纏わるる。中四尺を隔てて近寄るに力なく、離るるに術(すべ)なし。たとい忌(いま)わしき絆(きずな)なりとも、この縄の切れて二人離れ離れにおらんよりはとは、その時苦しきわが胸の奥なる心遣(こころや)りなりき。囓(か)まるるとも螫(さ)さるるとも、口縄の朽ち果つるまでかくてあらんと思い定めたるに、あら悲し。薔薇の花の紅(くれない)なるが、めらめらと燃え出(いだ)して、繋(つな)げる蛇を焼かんとす。しばらくして君とわれの間にあまれる一尋(ひとひろ)余りは、真中(まなか)より青き烟を吐いて金の鱗の色変り行くと思えば、あやしき臭(にお)いを立ててふすと切れたり。身も魂もこれ限り消えて失(う)せよと念ずる耳元に、何者かからからと笑う声して夢は醒(さ)めたり。醒めたるあとにもなお耳を襲う声はありて、今聞ける君が笑も、宵(よべ)の名残かと骨を撼(ゆる)がす」と落ち付かぬ眼を長き睫(まつげ)の裏に隠してランスロットの気色(けしき)を窺(うかが)う。七十五度の闘技に、馬の脊(せ)を滑(すべ)るは無論、鐙(あぶみ)さえはずせる事なき勇士も、この夢を奇(く)しとのみは思わず。快からぬ眉根は自(おのずか)ら逼(せま)りて、結べる口の奥には歯さえ喰い締(し)ばるならん。
「さらば行こう。後(おく)れ馳(ば)せに北の方(かた)へ行こう」と拱(こまぬ)いたる手を振りほどいて、六尺二寸の躯(からだ)をゆらりと起す。
「行くか?」とはギニヴィアの半ば疑える言葉である。疑える中には、今更ながら別れの惜まるる心地さえほのめいている。
「行く」といい放って、つかつかと戸口にかかる幕を半ば掲げたが、やがてするりと踵(くびす)を回(めぐ)らして、女の前に、白き手を執りて、発熱かと怪しまるるほどのあつき唇を、冷やかに柔らかき甲の上につけた。暁の露しげき百合(ゆり)の花弁(はなびら)をひたふるに吸える心地である。ランスロットは後(あと)をも見ずして石階を馳け降りる。
 やがて三たび馬の嘶(いなな)く音(ね)がして中庭の石の上に堅き蹄が鳴るとき、ギニヴィアは高殿(たかどの)を下りて、騎士の出づべき門の真上なる窓に倚(よ)りて、かの人の出(いづ)るを遅しと待つ。黒き馬の鼻面(はなづら)が下に見ゆるとき、身を半ば投げだして、行く人のために白き絹の尺ばかりなるを振る。頭に戴ける金冠の、美しき髪を滑りてか、からりと馬の鼻を掠(かす)めて砕くるばかりに石の上に落つる。
 槍(やり)の穂先に冠をかけて、窓近く差し出したる時、ランスロットとギニヴィアの視線がはたと行き合う。「忌まわしき冠よ」と女は受けとりながらいう。「さらば」と男は馬の太腹をける。白き兜(かぶと)と挿毛(さしげ)のさと靡(なび)くあとに、残るは漠々(ばくばく)たる塵(ちり)のみ。

小语种学习网  |  本站导航  |  英语学习  |  网页版
10/12 02:19
首页 刷新 顶部