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恐怖王-未亡人夏子(2)
日期:2021-08-29 23:51  点击:263
 蘭堂は相手の余りの素早さにあっけにとられ、一瞬間塀の下にぼんやりと突立っていた。
「あれが人間だろうか。ジャンピングの選手だって、とても及ばぬ早業だ」と思うと、相手が何か恐ろしい動物の様に感じられて、ゾッとしないではいられなかった。
 彼には、残念ながら、塀の頂上へ手をかけることさえ出来相もない。急いで表門に廻り、この邸の主人に告げて、怪物をえる外はなかった。
「サア、出て来い。貴様の方で出て来なければ、俺は晩まででも、ここに待っているぞ」
 蘭堂は大声で怒鳴って、敵が再び塀を乗り越して逃げ出さぬ用心をして置いて、足音を盗んで、グルッと表門に廻った。
 、門は開けっ放しになっていたので、駈け込んで洋館の入口のベルを押した。と、に、ドアが開いて、一人の洋装婦人が顔を出した。
「マア、大江先生!」
 婦人がびっくりして叫んだ。見ると彼の熱心な愛読者として知合っている未亡人夏子であった。
「ヤ、喜多川さんでしたか。僕、ここの御主人に逢い度いのですが」
 蘭堂がせき込んで云うと、
「主人って、ここわたくしのうちですのよ」
 若い未亡人が、にこやかに答えた。
 蘭堂は彼女に逢ってもいたし、彼女から手紙も貰って住所は知っていたが、一度も訪ねたことがなかったので、この堂々たる邸宅を見て、一寸驚かぬ訳には行かなかった。
「マア、お入り下さいませ。今出掛けようとしていたのですけど、構いませんわ。サア、お入り下さいませ。本当によくいらしって下さいましたわね」
「イヤ、そうしてはいられないのです。裏庭を見せて頂き度いのです。それから、書生さんか何か男の人は居ないでしょうか」
「イイエ、あいにく書生は居りませんが、裏庭って、裏庭がどうかしましたの」
 若い未亡人は、この探偵作家気でも違ったのではあるまいかと、びっくりした表情だ。
「兎も角裏庭を見せて下さい。訳はあとでお話しします」
 と云い捨てて、彼はをあけて、建物の裏手へ駈け出して行ったが、やがて、失望ので、まだ入口に佇んでいる夏子の所へ帰って来た。妙なことをきながら。
「芝生だもんだから、足跡がないのです。やっぱり塀を越して逃げたかな」
「誰かが庭へ這入りましたの? マア、気味の悪い。誰ですの?」
 未亡人は震え上った。
「電話を貸して下さい。警察へ知らせて置かなければなりません」
 蘭堂は夏子の案内で慌しく電話室へ飛び込んだ。
 夏子が電話室の外に佇んで聞耳を立てていると、途切れ途切れに「恐怖王」だとか「ゴリラ男」だとかいう声が聞える。彼女はハッとして、色を失わないではいられなかった。
「先生、ゴリラ男がどうかしたのでございますか。もしや……」
 電話を切って出て来た蘭堂は、夏子の恐ろしく引き歪んだ顔にぶつかった。
「びっくりなすってはいけませんよ。実はそのゴリラ男が、お宅の裏の塀を乗り越えて、邸内へ逃げ込んだのです」
 それを聞くと、夏子は「マア」と息を呑んで、よろよろとあとじさりをした。
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