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恐怖王-大小姐消失(2)
日期:2021-08-29 23:51  点击:289
「それではやっぱり、……で、御容態はどんなですか」
 京子は負傷をして奥に寝ているか、入院でもしたのかと、尋ねると、伯爵はけげん顔で、
「エ、容態ですって? あなた何かお聞込みになったことでもあるんですか。わしの方では容態どころか、全くが分らんのです。しかも、のものが、あれの外出するのを誰も知らないでいる間に、消える様にいなくなってしまったのです」
 その日の午前十時頃、京子の所へ一人の客があった。大きなロイド眼鏡をかけた、の変な男であったが、一通の手紙を持参して、京子に渡してくれということで、書生がそれを取次ぐと、京子は手紙を読んで、こちらへお通しせよと、彼女の居間へ案内させた。
 十五分程話をして、その妙な男は帰って行ったが、その時彼を送り出した書生の話では、別に変った様子も見えなかった。
 それから一時間程して、女中が京子の居間へを知らせに行くと、そこにいる筈の京子の姿が見えないので、それから騒ぎになって、を隅から隅まで探し廻ったが、まるで蒸発してしまった様に、どこにも彼女の影さえなかった。
 調べて見ると、外出着もちゃんと揃っているし、も一足も紛失してはいない。まさか若い女がはだしで外出したとは思われぬ。どうもさっきの客が怪しいというので、彼の持参した手紙を探して見たが、その手紙さえ消えてなくなった様に、どこにも見当らぬのだ。
 京子の友達や親戚などへ電話で問合せたがどこへも行っていない。警察へも頼んであるけれど、まだ何の吉報もない。もう外に手の尽し様もなく、ただ家中のものが青い顔を見合せて溜息をつくばかりであった。
 そこへ探偵作家大江蘭堂が飛込んで来たのだ。伯爵夫妻がえていた様に、彼をじれたのも道理である。
「で、その妙な男が帰る時、京子さんは居間に残っていらしったのですね。その時何か変った様子は見えませんでしたか」
 蘭堂は令嬢消失の次第を聞き終ると、その場にせた書生に尋ねた。
「別にこれといって……」書生が答える。「私、お嬢さんの顔を見た訳ではないものですから。が鳴ったので、行って見ますと、ドアの中から、お嬢さんが『この方をお送りしておくれ』とおっしゃって、それからあの男が一人でドアを開けて出て来たものですから、私はそのまま先に立って玄関へ送り出したのです」
「それから、君はもう一度お嬢さんの部屋へかなかったのですか」
「エエ、そのまま玄関わきの書生部屋に這入って本を読んでいました」
「すると、女中さんが中食を知らせに行って、お嬢さんの部屋が空っぽになっていることが分るまで、君はずっと書生部屋にいたのですか」
「そうです。書生部屋からは玄関は勿論、門の所までが見通しになっているのに、お嬢さんは一度もそこを通られなかったのです。僕は読書しながらも、絶えず門を通る人は注意していたのですからね」
「間違いはないでしょうね」
「エエ、決して。お嬢さんが庭から塀でものり越して外出されない以上、お嬢さんの姿が見えないというのは、全く考えられない事です。実に不思議です」
 恐怖王の事件に「不思議」はつきものだ。今更驚くことはない。
「それじゃ、一度僕に、お嬢さんの居間を見せて頂けませんか」
 蘭堂はまるでの刑事探偵みたいなことを云って、椅子から立上った。
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