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海底魔术师-螃蟹精(1)
日期:2021-09-08 23:51  点击:268

おばけガニ


 深い水の中ですから、パッと、とびつくことはできません。ふわりふわりと、泳ぐようにして、あいてにくみついたのです。
 ダンダラぞめの怪人は、それを見ると、びっくりして、金塊の箱をすてて逃げだそうとしましたが、もうまにあいません。そこで、しまダイのような怪物と、西洋のよろいのおばけみたいな潜水夫との、おそろしい、とっくみあいが、はじまったのです。
 外の部屋ほどではありませんが、その部屋にも、二十年のあいだの海のゴミがたまっていました。ふたりの格闘につれて、そのゴミがもやもやとたちのぼり、あたりは、まるで、煙につつまれたようになってしまいました。
 ダンダラぞめの怪人は、逃げよう、逃げようとしているので、ふたりは、とっくみあいながら、いつのまにか、ドアの外に出て、それから甲板にのぼる鉄の階段の下まできていました。
 そのへんには、コンブのような、大きな葉の海草が、たくさんはえています。逃げおくれた魚もおよいでいます。そのなかで、よろいのおばけと、ダンダラぞめとが、よこになったり、さかさまになったりして、とっくみあっているのです。陸上のけんかとちがって、海の底の格闘は、映画のスローモーションのように、のろのろした、じつにうす気味わるいものでした。
 階段の下までくると、ダンダラぞめの怪人が、にわかに、いきおいよくなりました。そして、まるで魚のように、ピチピチとはねまわるものですから、潜水夫の、つかんでいた手が、すべって、はなれてしまいました。
 すると、怪人は、足のさきについている、大きな水かきで、サーッと水をけって、みるみる階段の上へ浮きあがっていきました。潜水夫は重いナマリのついたくつをはいているのでとても、そのまねはできません。一だんずつ、階段をのぼっていくほかはないのです。ざんねんながら、とうとう敵を逃がしてしまいました。
 潜水夫は、おおいそぎで、もとの船室にもどり、水中電灯をもって、甲板にあがりました。
 すると、大洋丸の大きな船体から、すこしはなれた海底を、白い光がぐんぐんむこうの方へ動いているのが見えました。水中電灯です。怪人は水中電灯をもたないで逃げたのですから、それは怪人ではありません。いったい、なにものでしょう?
「ああ、わかった。ぼくの友だちが、あとからもぐってきたんだ。そして、怪人をみつけて追っかけているのだ。」
 潜水夫は、そうおもったので、いそいで、そちらへ近づいていきました。さっき潜水カブトの中の電話で、ハヤブサ丸に「おうえんをたのむ。」と、よびかけておいたので、もうひとりの潜水夫が、もぐってきたのです。
 怪人は電灯がないので、方角がわからなくなり、コンブ林の中で、まごまごしているうちに、ふたりの潜水夫に、はさみうちになってしまいました。怪物の目玉のような水中電灯が、右と左から、ぐんぐんせまってくるのです。
 怪人はやっとのことで、コンブ林をぬけだし、ゴツゴツした岩ばかりの海底を逃げていきます。ふたりの潜水夫は、五メートルほどあとから、それを追っかけてくるのです。

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