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少年侦探团-妙计(3)
日期:2021-09-19 23:56  点击:260
「くわも、ちゃんと用意してまいりました。」
 支配人は、最初にもちこんでおいた、長いふろしき包みをひらいて、一丁のくわをとりだしますと、いきなりしりはしょりをして、床板の下の地面におり立ちました。
 そのときです。ふたりが仕事にむちゅうになって少しも気づかないでいるすきに、またしても板戸の一枚が、音もなくスーッと細めにひらき、そこから見おぼえのある顔が、ソッと室内のようすをのぞきこんだではありませんか。あのかわいらしいお手伝いさんです。謎の小娘です。
 小娘は、しばらくふたりのようすをながめたうえ、また音もなく戸をしめて、立ちさってしまいましたが、それから五分ほどたって、支配人の門野老人が、やっと穴を掘りおわったころ、とつぜん、家の裏手のほうから、おそろしいさけび声が聞こえてきました。
「火事だあ。だれか来てくれえ。火事だあ。」
 店員の声です。
 時も時、もう三十分もすれば、すっかりほんものの黄金塔をうずめることができようという、きわどいときに、このさわぎです。
「おい、たいへんだ、ともかく塔やくわを床下にかくして、畳を入れてしまおう。早く、早く。」
 主人と支配人とは、力をあわせて塔の五つの部分を床下に投げこみ、床板をもとどおりにして、畳をしき、部屋には外からかぎをかけておいて、あわてふためいて、火事の現場へかけつけました。
 裏庭へ出てみますと、庭のすみの物置き小屋から、さかんに火を吹いています。さいわい母屋からはなれた小さな板子屋ですから、付近に燃えうつるというほどではありませんけれど、ほうっておいてはどんな大事にならぬともかぎりません。
 大鳥氏は支配人とともに、店員を呼びあつめ、声をかぎりにさしずをして、やっと出火を消しとめることができました。かろうじて消防自動車の出動をみなくてすんだのです。
 その火事さわぎが、やや二十分ほどもつづきましたが、そのあいだに黄金の塔の部屋には、みょうなことがおこっていました。
 主人をはじめ店員たちが、みんな火事場のほうへ行っているすきをめがけて、小さな人の姿が、かぎのかかった板戸をくもなくあけて、すべるように部屋の中へはいっていったのです。
 女学生のようなおさげのかわいらしい少女。いわずとしれた新参(しんざん)のお手伝いさんです。謎の少女です。
 少女は黄金塔の部屋へはいったまま、何をしているのか。しばらくのあいだ姿をあらわしませんでしたが、やがて、十分あまりもすると、板戸が音もなくひらいて、少女の姿が部屋をすべりだし、注意ぶかく戸をしめると、そのまま台所のほうへ立ちさってしまいました。
 この謎の少女は、いったい何者でしょうか。手ぶらで部屋を出ていったところをみますと、塔をぬすみにはいったものとも思われません。では、何をしにはいったのでしょう。読者諸君、こころみに想像してごらんなさい。
 それはともかく、やがて、火事さわぎがしずまりますと、大鳥氏と支配人は、大急ぎでもとの奥座敷に引きかえしました。そして門野さんは、片はだぬぎになって、また畳をあげ、床板をはずし、くわを手にして床下におりたちました。
 大鳥氏は、もしや、いまのさわぎのあいだに、だれかが、この部屋へはいって、畳の下の黄金塔をぬすんで行きはしなかったかと、支配人が、床板をはずすのも、もどかしく、縁の下をのぞきこみましたが、黄金塔には、なんのべつじょうもなく、黒い土の上に、ピカピカ光っているのを見て、やっと安心しました。
 やがて門野支配人は、黄金塔を床下の深い穴の中に、すっかりうめこんでしまいました。そして、床板も畳ももとのとおりにして、
「さあ、これでもう大じょうぶ。」
 といわぬばかりに、主人の顔を見て、ニヤニヤと笑うのでした。
 こうして、ほんものの宝物は、まったく人目につかぬ場所へ、じつに手ぎわよくかくされてしまいました。
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