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一寸法师-死者之腕(01)
日期:2021-09-27 23:59  点击:249

一寸法師

江戸川乱歩

 

死人の腕


 小林紋三(こばやしもんぞう)はフラフラに酔っ払って安来節(やすきぶし)御園(みその)館を出た。不思議な合唱が――舞台の娘たちの死物狂いの(たか)調子と、それに呼応する見物席のみごとな怒号が――ワンワンと頭をしびらせ、小屋を出てしまっても、ちょうど船暈(ふなよい)の感じで足許(あしもと)をフラフラさせた。その辺に(のき)を並べている夜店の屋台が、ドーッと彼の方へ押寄せて来るような気がした。彼は明るい大通(おおどおり)をなるべく往来の人たちの顔を見ないように、あごを胸につけてトットと公園の方へ歩いた。もしその辺に友達が散歩していて、彼が安来節の定席(じょうせき)からコソコソと出て来るところを見られでもしたら、と思うと気が気でなかった。ひとりでに歩調が早くなった。
 半町も歩くと薄暗い公園の入口だった。そこの広い四辻(よつつじ)を境にして人足(ひとあし)はマバラになっていた。紋三は池の鉄柵のところに出ているおでん屋の赤い行燈(あんどん)で、腕時計を透して見た。もう十時だった。
「さて帰るかな、だが帰ったところで仕方がないな」
 彼は部屋を借りている家のヒッソリした空気を思い出すと、何だか帰る気がしなかった。それに春の夜の浅草(あさくさ)公園が異様に彼をひきつけた。彼は歩くともなく、帰り(みち)とは反対に公園の中へと入って行った。
 この公園は、歩いても歩いても見尽すことのできない不思議な魅力をもっていた。フト何処(どこ)かの隅っこで飛んでもない事柄に()(くわ)すような気がした。何かしら素晴しいものが発見できそうにも思われた。
 彼は公園を横断する真暗な大通を歩いて行った。右の方はいくつかの広っ()を包んだ林、左側は小さな池に沿っていた。池では時々ボチャンボチャンと(こい)の跳ねる音がした。藤棚を天井にしたコンクリートの小橋が薄白く見えていた。
「大将、大将」
 気がつくと右の方の闇の中から誰かが彼を呼びかけていた。妙に押し殺したような声だった。
「ナニ」

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