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一寸法师-死者之腕(05)
日期:2021-09-27 23:59  点击:222

 洋服が口ひげを()でながら、含み声でいった。
「ヘエ、この二三日、大分お暖かで」
 遊び人風のが、小さい声で答えた。二人は初対面らしいのだが、何となく妙な組合せだった。年配は二人共四十近く見えたけれど、一方は小役人(こやくにん)といった様なしかつめらしい男で、一方は純粋の浅草人種なのだ。それが、電車もなくなろうというこの夜更けに、暢気相(のんきそう)に気候の話などしているのは、如何(いか)にも変だった。彼等はきっと、お(たがい)に何かの目論見(もくろみ)があるのだ。紋三は段々好奇心の高まるのを感じた。
「どうだね、景気は」
 洋服は、相手の男のよく太った身体を、ジロジロ眺め廻しながら、どうでもよさそうに尋ねた。
「そうですね」
 太った男は、(ひざ)の上に両肱(りょうひじ)をついて、その上に首を垂れて、モゾモゾと答えた。そんなつまらない会話が、(しばら)く続いていた。紋三は、一寸法師に習って、長い間二人から目を離さなかった。
 やがて洋服は「アーア」と伸びと一緒に立上ったかと思うと、紋三達の方をジロジロ眺めながら、不思議なことには、再び同じベンチに、太った男とほとんどすれずれに腰をおろした。太った男はそれを感じると、一寸洋服の方を見て、すぐ元の姿勢に返った。そして、頭の毛の薄くなった四十男が、何か恥かしそうな嬌態(しな)をした。
 洋服が突然猿臂(えんぴ)を伸ばして――全くえんぴという感じだった――太った男の手をとった。
 そして又、しばらくボソボソとささやき合うと、彼等は気をそろえて、ベンチから立上り、ほとんど腕を組まんばかりにして山を下りて行くのだった。
 紋三は寒気を感じた。妙な比喩(ひゆ)だけれど、いつか衛生博覧会で、ろう細工の人体模型を見た時に感じた寒気とよく似ていた。不快とも、恐怖とも例え様のない気持だった。そしてもっといけないのは、彼の前の薄暗い所で、例の一寸法師が、降りて行った二人の跡を見送りながら、クックッと笑いだしたことだった。(紋三はその異様な笑い顔を、それから(のち)も長い間忘れることが出来なかった)畸形児は小娘の様に手を口に当てて少し身体をねじ曲げ、クックッといつまでも笑っていた。紋三はいくらもがいても逃れることの出来ない、悪夢の世界にとじこめられた様な気持がした。耳の所でドドド……と、遠鳴りみたいなものが聞えていた。

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