行业分类
一寸法师-大小姐失踪(13)
日期:2021-09-27 23:59  点击:336

「いいえ、別に見覚えはございませんが、やっぱりいつもの様に印半纒(しるしばんてん)を着た汚ない男でございました」
「その男が通用門から入ったのですね。で、ゴミを持って行く所を見ましたか」
「いいえ、ただ門の所で行違いましたばかりで、私お使(つかい)があったものでございますから。お君ちゃんはどう?」
「私もよく見なかったけれど、そうそう、今考えて見ると妙なことがあったわ。前の人が持って行ってから二、三日しかならないのに、(うち)のゴミ箱が一杯になっていたのよ。私あの朝、掃除屋さんが来る前にゴミを捨てに行って、気がついていたのだけれど」そしてお君は明智の方を向いて、「忙しくって、ついそのまま忘れてしまったのでございますわ」
「そのゴミ箱っていうのは、大きなものかい」
 紋三は明智の質問が待ち切れないで聞いた。彼はこうした異様な出来事には、人一倍ひきつけられた。彼は(ひそか)に三千子の行方について彼自身の判断を試みようとしているのだった。
「エエ、随分大きいのですわ」
「人間が入れる位?」
「エエ、大丈夫入られますわ」
 そんな問答がくり返されたあとで明智達は勝手口のゴミ箱を調べに行った。正門とは反対の側の高いコンクリート塀に通用門が開いていて、その入ったすぐの所に、黒く塗った大型のゴミ箱が置いてあった。一応それを調べて見たけれど、ただ大型であることが、あの突飛(とっぴ)な想像を可能ならしめる外、別段何の発見もなかった。
「ゴミ箱の中へ人間を隠して、上から汚いゴミをかぶせて置く。それを衛生夫に化けた男がゴミ車に移して、どこかへ持去る。これは非常に馬鹿げた空想です。が、馬鹿馬鹿しければ馬鹿馬鹿しい程、却って本当かも知れないのです。この事件には何かしら突飛な所があります。一寸常識では考えられない様な所があります。併し、犯罪者は時に非常に突飛な馬鹿馬鹿しい思いつきをするものですよ」
 明智はけげん顔の山野夫人に説明した。
 それから綿密な邸内の捜索が行われた。召使達も引続き取調べられた。頭痛がするといって女中部屋に寝ていた小間使の小松には、明智がその部屋へ行って色々尋ねた。
 そうして山野家の空気に(ひた)っている間に、明智は何かしら少しずつ悟る所があった。山野夫人を始め召使達の言語表情から、おぼろげな一つの判断が生れて来る様に思われた。
 明智と小林とは、晩餐(ばんさん)のもてなしを受けて、()()って山野家を辞した。紋三は色々言葉を(もう)けて明智の判断を聞こうとしたけれど、明智は紋三が自動車を降りて、彼の下宿の方へ別れて行く時まで、ほとんど沈黙を続けていた。
 それから二日の間は、表面何事も起らなかった。明智は彼の探偵を進めていたに相違ないし、小林紋三は小林紋三で、彼自身の判断に従って、山野家を訪問したり、浅草公園や本所の養源寺の附近をうろついて見たりしていた。山野家にも新しい出来事は起らなかった。
 だが、三日目の四月十日の夜、銀座(ぎんざ)通りの有名な百貨店に、前代未聞の珍事が出来(しゅったい)した。そして、山野三千子失踪(しっそう)事件が、決してありふれた家出なんかでないことが判明した。

小语种学习网  |  本站导航  |  英语学习  |  网页版
10/03 19:25
首页 刷新 顶部