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一寸法师-梅花娃娃(03)
日期:2021-09-27 23:59  点击:328

 間もなく番頭の非常信号によって、宿直員全部が三階に集まった。そしてあるたけの電燈をつけて、非常に物々しい捜索が始められた。陳列台の白布は一々とりのけられ、台の下や、開き戸の中なども(くま)なく調べられた。三階に隠れていないと分ると、全員が二隊に分れて、一隊は四階以上を、一隊は二階以下を探すことになった。だが、あの様に種々雑多の品物を、所狭く置並べた百貨店の中で、小さな一人の人間を探し出すのは、不可能に近い仕事だった。
 ほとんど夜明け方まで大がかりな捜索が続けられたが、結局分ったのは、何一品(ひとしな)盗まれていないこと、窓その他人間の出入(ではい)り出来る場所は、凡て完全に戸締りがしてあって、外部から何者かが忍び入った形跡絶無なことであった。
 盗まれた品物がなければ、宿直員に越度(おちど)はなく、罰俸(ばつぼう)を恐れることもなかった。
「あいつ臆病者だからね。きっと何かを見違えたんだよ」
 という様なことで、捜索はうやむやの内におわってしまった。
 その翌日所定の時間になると、百貨店のあらゆる窓やドアが開け放され、いつに変らぬ雑沓が始まった。
 支配人は、一応出入口の係員を呼んで一寸法師のお客を見なかったかと尋ねたが、昨日も今日もだれ一人そんな不具者に気づいたものはいなかった。結局昨夜の騒ぎは若い店員の(まぼろし)に過ぎなかったのかと思われた。
 盗まれた品物もなく、曲者の忍び込んだ箇所もない。その上若い番頭が主張する様な不具者なんか、昨日閉店以前に入った形跡もなく、今日開店後出て行った様子もない。(そういう不具者なればだれかの目につかぬはずはないのだが)だから若い番頭の見たのは、単に彼の幻覚に過ぎなかったか、それとも又、少年店員の中のいたずらものが、臆病な彼をおどかしてやろうと、態と人形の真似なんかしていたのかも知れない。という様な事で、結局発見者が同僚達の嘲笑(ちょうしょう)をかったばかりで、この事件は落着しようとしていた。
 だが、その日のお昼頃になって、例の三階の呉服売場に途方もない騒ぎが起った。
 桜の造花の下の三美人人形は、まだ最近飾られたばかりなので、三階中の人気を集め、そのまわりは、いつも黒山の人だかりがしていたにも拘らず、不思議とだれもそこへ気づかなかった。大人達にとっては、恐らくその着想が、余りにも奇抜過ぎたのであろうか、それを発見したのは二人の小学生徒であった。
 彼等はおそろいの(こん)サージの学生服をつけて、柵の一番前の所に立って人形を見上げていた。
「ねえ、兄さん、この人形はおかしいよ。右の手と左の手と、まるで色が違っているんだもの、この作者は下手だねえ」
 一方の小学生が人形の作者を批評した。
「生意気おいいでないよ」兄の方は周囲の見物達に気を兼ねて弟をたしなめた。「御覧よ。あの手提(てさげ)を提げている方の手なんか色は少し悪いけど、細工が実に細かく出来ているじゃないか。この作者は決して下手じゃないんだよ」

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