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一寸法师-疑惑(06)
日期:2021-09-29 23:53  点击:311

 紋三は明智の廻りくどい話し方をもどかしく思った。明智のいっているのは昨夕山野夫人をつれ出した人物に相違ない。あの怪しげな男が夫人を脅迫していることは明白だ。だが、あの男が犯人でないとすれば、脅迫されている方の、三千子にとっては継母の百合枝夫人こそ、恐しい殺人者なのではあるまいか。彼はその外に考え様がない様に思った。明智も山野夫人を疑っているには相違ないのだが、果して彼女を犯人だと思っているかどうかは不明だった。
「ですが、この紙切れはどこから見つけ出したのです」
 紋三はその点を明かにすれば、何か分り相な気がしたのだ。
「僕の腹心のお雪が拾ってくれたのだ。手紙の受取主は山野の奥さんだ。奥さんがここの文句にある通り、読んでしまってから細かく切り裂いて、丸めて、台所の七輪(しちりん)の中へくべたのを、お雪がそっと拾ったのだ。幸い七輪の火が少かったので、奥さんは焼けてしまったと思ったのが、中の方がこれだけ残っていた。封筒がすっかり灰になったのは残念だけれど、併しこれだけでも随分手がかりにはなる」
 紋三はそれだけ聞くと、いよいよ彼の疑いを確めることが出来た様に思った。
「では、手紙の受取人が奥さんだとすると、この(御依頼により)というのは、奥さんの御依頼によりですね。(埋葬)というのは三千子さんの死体をどっかへ(うめ)たことかも知れませんね。それから、この(と小生と蕗屋の三人のみ)の前には奥さんの名前がある訳ですね」
 彼は矢つぎ早に想像を進めて行った。そして、実はビクビクしながら明智の表情をうかがった。
「そういう風にも考えられる、併し断定は出来ない。断定すれば犯人は山野夫人と極ってしまって、世話はないのだけれど」
 明智はニヤニヤ奥底の知れない笑い方をした。
「でも外に考え様がないじゃありませんか」
 と紋三は明智に本音は吐かせないでは置かぬ意気込みだった。
「奥さんを疑おうとすれば、まだほかにも材料があるよ」明智は落つき払っていた。「このショールと手提と、それからこの手文庫の中の草履(ぞうり)だ。これはみんな三千子さんが家出の時、身につけていたといわれている品だが、僕のお雪はこの三品(みしな)を山野夫人の部屋の押入れの隅から見つけ出してくれたのだよ」
「つまり山野夫人が三千子さんを家出と見せかけるために、その品々を隠して置いた訳ですね。そうだとすれば、なおさら夫人が疑わしいじゃありませんか」
 紋三はこの新しい証拠品にギックリしながら、しかし一層烈しく突っ込んで行った。
「疑わしいだけで、まだ夫人が犯人だなんて極める訳には行かないよ」明智は軽く受流した。「君がそんなに夫人を疑うなら、試みにその反対の見方をして見ようか。まず第一は夫人が進んで僕に事件を依頼したこと、これは前にもいった通り犯罪者の高を括った大胆なお芝居だとしても、手紙が十分焼けてしまうまで見極めずに立去ったことだとか、大切な証拠品を自分の部屋の押入れの隅などへ、一寸探せばすぐ分る所などへ入れて置いたことだとかは、ピアノの指紋を消したり、死体をゴミ箱へ隠したりした手際とは雲泥(うんでい)の相違だ。犯罪者は往々下らない過失をやるものだけれど、これは少し馬鹿馬鹿し過ぎるかも知れない。とも考えられるじゃないか」

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