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宇宙怪人-百万目击者(01)
日期:2021-10-01 23:50  点击:250

百万人の目撃者


 平野少年と北村さんが、そんな話をしてから、半月ほどのちの、ある土曜日の午後、平野少年は、おとうさんにつれられて、銀座に近い大きな映画館で、着色の漫画映画を見ました。そして、映画館を出たのは、夕がたの五時ごろでした。
 すこし散歩しようというので、ふたりは銀座通りに出て新橋(しんばし)駅のほうへ歩いていきました。銀座通りのショウウインドウには、もう電灯がついて、ネオンの広告も、かがやいていましたが、空はまだ、うすあかるいのです。電灯のひかりと、空のあかるさが、ちょうど同じくらいという、あの、なんとなく、へんな気もちのする時間でした。すれちがう人のすがたが、ひどくぼんやりして、影のように感じられる、たそがれのひとときです。
 銀座通りは、いつものように、たいへんな人通りでした。平野少年は、ウッカリすると、はぐれそうになるので、おとうさんの手を、しっかりにぎって、歩いていましたが、どういうわけか、ふと、空が見たくなりました。いま、空を見れば、きっと、なにか、ふしぎなことがあるというような、みょうな気がしたのです。それで、いままで、ショウウインドウばかり見ていた目をはなして、ヒョイと、空を見あげました。
 晴れてはいますが、すこしも風のない、なんとなく、どんよりした空でした。星が二つ三つ、かすかに光っています。そのとき、平野君は、なぜか空とぶ円盤のことを、おもいだしました。あの円盤を地球へ飛ばせた星は、いったい、どの星だろうと、遠い遠い、べつの世界のことを考えたのです。
「どうしたんだ。はやく、あるかないか。」
 平野君が、立ちどまってしまったものですから、おとうさんが、グッと手をひっぱって、しかるように、おっしゃるのでした。
 そのときです。平野少年は、ギョッとして、心ぞうが、のどのへんまで、とびあがってくるような気がしました。ああ、あれは、まぼろしでしょうか。ちょうど頭の上のへんの、高い高い空を、白っぽく光る、おさらのような丸いものが、ひじょうなはやさで、スーッと、飛んでいくではありませんか。
「どうしたんだ。一郎、なにをみつめているんだ。」
 おとうさんが、また、声をおかけになりました。一郎というのは、平野少年の名です。
「おとうさん、ごらんなさい。アレアレ、また一つ、オヤッ、二つになった。三つ、四つ、ああ、あすこにも、五つ飛んでいる。ね、おとうさん、見えるでしょう。」
 おとうさんは、一郎少年が、気でもちがったのではないかと、びっくりして、おもわず、空を見あげました。目がなれるまでは、よくわかりませんでしたが、一郎少年が、あれ、あれとゆびさすので、そのほうを、じっと見ていますと、へんなものが、目にとまりました。銀色にひかる、ひらべったい丸いものです。それが、一つ二つ三つ四つ五つ、ひじょうなはやさで、銀座通りをよこぎって、西のほうへ飛んでいます。平野一郎少年は、まぼろしを見たのではありません。おとうさんにも、おなじものが見えたのです。
 銀座の人通りの中で、親子が空を見あげて、さもおどろいたように、立ちどまっているのですから、たちまち、人のちゅういをひきます。ひとり立ち、ふたり立ち、やがて、そのへんをあるいていたおおぜいの人が、みな立ちどまって、空を見あげました。
「やあ、風船だ。風船が、飛んでいる。」
 ひとりの少年が、さけびました。
「風船じゃない。ゴム風船が、あんなにひらべったいものか。あんなに、はやく飛ぶものか。円盤だ! 空とぶ円盤だ!」
 ひとりの青年が、どなりました。
 すると、それが、つぎからつぎへと、つたわったものですから、さあ、たいへんです。銀座の人あしが、パッタリと、とまってしまい、みんなが、空を見あげました。銀座じゅうの何千何万という人が、いっしゅんかん石にでもなったように動かなくなってしまったのです。じつに、異様な光景です。すると、それに気づいた自動車がとまり、自転車がとまり、やがて電車さえもとまるさわぎでした。
 しかし、それらの人々が、みんな円盤を見たわけではありません。「どこに、どこに。」といっているうちに、五つの円盤は、銀座の空をよこぎって、たちまち、見えなくなってしまいました。
「あっちだ、あっちだ。」

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