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透明怪人-第三个跟踪者
日期:2021-11-10 23:56  点击:253

第三の尾行者


 夕方の町には、ふしぎに人通りがありません。シーンとしずまりかえっています。そして、町ぜんたいにもやがかかったようで、うっかりしていると、ろう人形の怪紳士は、そのもやの中へ、スーッと消えてゆきそうでした。島田君は、ふと、ぼくはいま夢を見ているんじゃないかしらと、思ったほどです。
 怪紳士は町かどをいくつもまがりました。そのたびに、少年たちは、ますます見おぼえのない町へ、はいってゆくのです。
 いつのまにか、屋敷町になって、両がわに長いコンクリート(べい)が、つづいていました。少年たちは、からだをかくすものが何もありません。塀にピッタリ身をつけて、カニのように、横ばいをするほかはないのです。
 怪紳士は、三十メートルばかりむこうのもやの中を、おなじ調子で、コットリ、コットリ、あるいています。あるくたびに竹のステッキが、キュッ、キュッと、しなうのです。
 いまにも、こちらをふりむくのじゃないか。そして、あの空洞の目で、ぼくたちを見つけて、おっかけてくるのじゃないかと、ふたりはもうびくびくものでしたが、さいわい、怪紳士は一度も、あとを見ないで、まるで、首をまわすことのできない、機械人形のように、まっすぐに、あるいてゆきます。
 コンクリート塀が、つきると、こんどはいけがきばかりの町になりました。いけがきは身をかくすのに、つごうがよいけれども、さびしさは、ますばかりです。
 ところが、そのころになって、もう一つ、ふしぎなことがおこりました。尾行者がひとりふえたのです。ふたりの少年は少しも気づきませんでしたが、少年たちの二十メートルほどうしろから、ひとりの紳士が、やっぱり、あとをつけていたのです。
 紳士といっても、それはろう人形ではありません。ろう人形がふたりになったのではありません。三十五―六歳の、新聞記者とでもいったような服装の、すばしっこそうな紳士です。
 この人はふたりの少年のあとをつけているのか、それとも、もっと先のほうをあるいている、ろう人形を尾行しているのか、よくはわかりませんが、少年たちのようにビクビクしていないことだけは、たしかでした。その証拠に、この紳士は、さっきから、ニヤニヤ笑いながら、あるいているのです。へんな笑いかたです。なんだか、うすきみの悪い笑いかたです。
 やがて、いけがきもつきて、いよいよさびしい原っぱになりました。そのへんに、いちめんに石がころがっていたり、れんがのこわれたのが、つみかさねてあったり、ごみが山のようにつんであったり、おそろしいほど、あれはてた場所です。
 ろう人形の怪紳士は、その原っぱの中を、つっきって、まっすぐにあるいてゆきます。あたりは、ますます、うすぐらくなってきました。あまり用心ぶかくしていると、怪紳士を見うしないそうなので、少年たちは、思いきって、あいての十メートルほどうしろまで、ちかよりました。そして、まるで、地面をはうようにして、進んでゆきます。新聞記者ふうの紳士は、やっぱりニヤニヤ笑いながら、これも少年たちとのあいだを、グッとちぢめて、尾行をつづけています。
 石やれんがのゴロゴロした原っぱを通りすぎると、そのむこうに、何かギザギザのかたちの、大きなものが、黒くそびえていました。二階か三階だてのれんがの建物が、メチャメチャにこわされて、そのかべがギザギザの、のこぎりの山のようになって、のこっているのです。
 ろう人形の怪紳士は、そのこわれたれんがだてのほうへ、コットリ、コットリ、あるいてゆきます。そこが怪紳士のすみかなのかもしれません。
 れんがのかべが三方だけのこって、一方が入り口のように、こわれています。もとは大きな部屋だったのでしょう。怪紳士は、そのこわれた入り口のところから、スーッと消えるように、れんがのかべの中へ、はいってゆきました。
 それを見ると、少年たちは、ふるえだすほど、こわくなってきました。ふたりとも、今にも逃げだしそうなようすでしたが、木下君はグッと、ふみとどまって、島田君のうでを、つかみました。そして、かすかなささやき声で、
「行ってみよう。」
と言いました。そう言われると、島田君も逃げだすわけにはゆきません。勇気をふりしぼって、
「行ってみよう。」と答えました。

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