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透明怪人-怪人的老巢
日期:2021-11-13 23:47  点击:256

怪人のすみか


 透明怪人を、たったひとりで、尾行した子どもというのは、少年探偵団の副団長で、小林団長のかた腕と言われる、大友(おおとも)少年でした。大友(ひさし)という、中学二年生なのです。
 大友君は、いけがきのそとで、ルンペン青年が指さす、怪人物のすがたを見ると、とっさに、あれこそ透明怪人にちがいないと思いました。うしろすがたが、みんなに聞いていた怪人の服装と、まったく同じだったからです。
 こちらは、からだの小さい少年です。それに、さびしい屋敷町で電灯もごくすくないので、尾行は、わりにらくでした。島田邸から百メートルほど行った、くらい町かどに、一台の自動車が、ヘッドライトを消して、とまっていました。
 あやしい洋服紳士は、その自動車に近づくと、コツ、コツ、コツコツコツと、みょうなちょうしで、自動車のそとがわをたたいて、あいずをしたうえ、ドアをひらいて、うしろの席にこしかけ、運転手になにかボソボソささやいています。
 大友少年は身がかるくて、木馬や鉄棒が、だいとくいでした。そのうえひじょうな冒険ずきです。この好機会をのがしてなるものかと思いました。武者(むしゃ)ぶるいというのでしょう。なんだか、からだがふるえて心臓がドキドキしてきました。
 大友君は「よしッ。」と心の中でさけぶと、足音をしのばせて、自動車のうしろに、近づき、ヒョイと後部車輪のおおいのうえに、とびのり、そこに、つまさきだちをして、スルスルと、自動車の屋根の上に、のぼりつきました。目にもとまらぬ早わざです。大友君が、そうして、屋根の上に、ひらぐものように、すがりついたときには、自動車はもうはしりだしていたのです。
 自動車は、交番をさけて、くらい町から、くらい町へと、三十分あまりも、はしりました。怪人物も運転手も、自分たちのすぐ頭の上に、少年探偵団の副団長が、つきまとっていようとは、すこしも気づいていないようすです。大友君は、自動車が町かどをまがるたびに、いまにも、ふりおとされそうになりながら、やっとの思いで、屋根の上にすがりついていました。
 自動車がとまったのは、東京都内にはちがいないのですが、むかしの兵営のあととでもいった、草ぼうぼうの広っぱでした。見わたすかぎり、人家はなく戦災で焼けた大きなかれ木が、まだニョキニョキと立っていて、遠くの、にぎやかな町の空あかりの前に、そのかれ木のむれが、ボーッと浮きあがっています。
 怪人物が自動車をおりて、どこかへあるきだしたので、見うしなってはたいへんと、大友君も、屋根の上から、ソッと、すべりおりると、地面にひれふして、ようすをうかがいました。
 ガガガガ……と、すぐ頭の上で、ひどい音がしたので、びっくりして見あげると、自動車が出発するところでした。怪人の部下の運転手は、用事をすませた車を、どこかの秘密のガレージへ、はこぶのでしょう。見るまに、自動車は、やみのかなたへ消えていきました。
 さあ、いよいよ、さいごの尾行です。怪人のすみかは、この広っぱの、どこかにあるのです。それは、いったい、どんな場所でしょうか。大友少年の身辺は、ますます危険になってきました。
 見ると、むこうに、高さ十メートルもあるような、いちめんに草のはえたがけが、ズーッとつづいています。怪人はそのがけにむかって、すすんでいくのです。
 大友君は、草の上を、はうようにして、怪人のあとをつけました。まっくらな広っぱですから、たとえ怪人がふりむいても、めったにみつかるしんぱいはありません。音さえたてなければ、だいじょうぶです。
 怪人はがけのま下に、近づきました。そこは、ひじょうに、くらくて、もう、すがたも見わけられないほどです。大友君は、目をまんまるにひらいて、じっと、そのくらやみを見つめました。
 すると、カサカサと草のすれる音がして、それっきり、怪人のすがたは、まったく見えなくなってしまいました。いくら、見つめても、がけの土と草のほかには、何もないのです。
 怪人は、またしても、魔法をつかったのでしょうか。いや、そうではありません。そこには、草でかくれた、大きなほら穴があったのです。トンネルのような横穴があったのです。怪人はそのトンネルの中へはいっていったのです。
 大友君は、それと気づくと、そのトンネルの入り口に、はいよって、耳をすまして中のようすを、うかがいました。
 ゴソゴソと音がしています。怪人はトンネルのおくふかく、はいっていくのです。あとになって、わかったのですが、それは戦争中にほられた、横穴防空ごうでした。さびしい場所なので、だれも穴をうめないので、そのままになっていたのです。
 穴の入り口に、草がはえしげって、いまでは、そこに穴があるということさえ、わからなくなっていました。
 大友君は、音をたてぬように、用心に用心しながら、そのまっくらな横穴の中へ、はいりこんでいきました。
 ところが、十メートルも進むと、もう行きどまりになっていて、えだ道もなにもないのです。「オヤッ、へんだな、あいつは、どこかへかくれたのかしら。」しかし、どこにも、かくれるところはありません。穴はせまいのですから、怪人がいれば、大友君のからだにさわるはずです。
「またおくの手をだして、消えてしまったのかな。」と、ふしぎに思いながら、しばらく、じっとしていますと、すぐ目の前に、かすかな光が見えました。四十センチ四方ほどの、まるい穴があって、そのむこうが、ボンヤリあかるくなっているのです。
「ハハア、この小さな穴のむこうがわに、ひろい場所があるんだな。そこに、あかりがついていて、それが、ここまで反射しているんだな。すると、あいつは、この小さな穴から、中へはいりこんだのに、ちがいないぞ。」
 大友君は、やっと、そこに気がつきました。たとえ、だれかが、この横穴へはいっても、そのおくに、怪人のすみかがあることを、気づかれないように、そんな小さい穴が、通り道になっているのでしょう。いつもは、その穴に、内部から、ふたがしてあるのかもしれません。
「よしッ、この中へ、はいってみよう。」
 大友少年は、とっさに、決心をしました。ほんとうを言うと、大友君は、はやまりすぎたのです。怪人のすみかが、わかったのですから、ひとまず、ここで引きかえして、小林君や中村係長に、報告すればよかったのです。そうすれば、あんなおそろしいめに、あわなくてもすんだのです。
 しかし、冒険児、大友少年は、えものをみつけた猟犬のように、もうむちゅうになっていました。しずかに、あとさきのことを、考えるよゆうはなかったのです。
 その穴は、からだを横にして、やっと、はいこめるほどの、小さい穴でした。大友君は耳をすまして、穴のむこうがわに、だれもいないことをたしかめたうえ、ソロソロと、はいこんでいきました。そして、穴から首をだして、見まわしますと、思ったとおり、その中は、ひじょうに広い、ほら穴になっていることが、わかりました。
 ずっと、むこうのほうに、なにか板のわれめのような、たてに長く光ったものがあって、その光で、穴の中がボンヤリと見えています。天井は、おとなが立ってあるけるほど高く、はばも一メートルはある、土の廊下のような場所です。
 大友君は、思いきって、そこへ、はいりこみ、立ちあがって、板のわれめのような光るもののほうへ、おずおずと、あるいていきました。
 そばにちかづいてみると、やっぱりそれは板でした。板でできた、そまつなドアのようなものでした。その板のわれめから、もれているのは、赤ちゃけた、チロチロと動く光です。むこうがわに、ろうそくがつけてあるのに、ちがいありません。
 耳をすますと、ドアのむこうから、かすかな音が、聞こえます。人間が、あるきまわっているような音です。
 大友君は、ドアの前に、ひざをついて、板のわれめから中をのぞいてみました。そして、のぞいたかと思うと、なぜかギョッとしたように、身ぶるいしました。しかし、身ぶるいしながらも、そこから目をはなすことができないのです。まるで石にでもなったように、ながいながいあいだ、そのままのしせいで、身うごきさえしませんでした。

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