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透明怪人-4号透明人
日期:2021-11-13 23:47  点击:287

透明怪人第四号


 老人のおそろしい話が、つづきます。
「いま、せけんをさわがせている、あの透明怪人は、いったいなんだろう。あんな、ふしぎな人間が、しぜんに生まれてきたと思うかね。むろん、生まれたのではない。星の世界から飛んできたのでもない。あれは、つくられたものだ。そして、あれを、つくったのは、このわしなのだ。」
 大友少年は、怪老人のキラキラ光る(かく)メガネと、もの言うたびに、ユラユラする白ひげを、あっけにとられて、ながめていました。
「つくると言っても、人間そのものを、つくるのではない。きみたちと同じ目に見える人間のからだに、ある化学的変化をあたえると、からだぜんたいが、すきとおって、見えなくなってしまうのだ。わしは三十年のあいだ、苦心に苦心をかさねて、そういう変化をあたえる薬品を発明したのだよ。そして、さいしょの試作品として、つくったのが、今、世間をさわがせている透明怪人第一号だ。
 きみがのぞいた、あのパジャマをきたやつだ。島田君のうちから真珠塔をぬすみだしたやつだ。
 わしは第三号まで、つくった。つまり、三人の透明人間が、できているのだ。しかし、せけんにだしたのは第一号だけで、第二号と第三号は、まだ、わしの手もとにおいてある。もうすこし、訓練をしなければならないのでね。そのふたりの透明怪人は、今もこの部屋にいる。どこにいるか、つくったわしにも見えないが、この部屋にいることは、まちがいない。おい、二号はいるか、いたら返事をしなさい。」
 すると、部屋のむこうのほうから、「ハイ。」という返事がしました。
「三号はいるか。」
 それにたいして、また、べつの方角から、ちがった声が「ハイ。」とこたえました。
「どうだ、大友君、たしかにふたりいるだろう。しかし、すがたは、まったく見えない。これではまだ、信用できないかね。よし、それじゃあ、しょうこを見せよう。二号、実験台の右のはしにあるガラスビンを、薬品だなの上にのせなさい。」
 老人のことばが、おわるかおわらないうちに、その実験台の上のガラスビンが、スーッと宙に浮きあがりました。そして、グングン高く、あがっていって、そのビンは、薬品だなのいちばん上に、チョコンとのって、そのまま動かなくなりました。
 たしかに、この部屋には目に見えない人間がいるのです。いったい、そんなことができるのでしょうか。薬の力で人間を、自由自在に、すきとおらせ、見えなくしてしまうなんて、そんなことができるものでしょうか。しかし、目のまえに、しょうこを見せられては、信じないわけにはいきません。大友君は、夢に夢みるここちでした。
「どうだね、わしの言うことが、うそでないと、わかったかね。いままでに、つくったのは、たった三人だ。しかし、三人でおしまいではない。あいてさえしょうちすれば、百人でも千人でも、いや、何万、何十万でも、透明人間ができるのだよ。わかるかね、これが、どんなにおそろしいことだか、わかるかね。
 十万人の透明人間があれば、世界じゅうを敵にまわしてでもまけやしない。こちらは目に見えない人間だから、どんなところへでも、はいれる。どんなひみつでも、さぐりだせる。ところが、あいてのほうでは、透明人間を攻めようとしたって、攻めることができない。とらえようとしても、とらえることができない。それがひとりでなくて、十万人となれば、世界の何億人にも対抗できる。人類にとって、こんなおそろしいことがあるだろうか。
 原子爆弾いじょうの大発明というのは、このことだよ。わしの発明によって、世界が一変するのだ。戦争ができなくなってしまうのだ。そればかりではない。地球の上に、目に見える人間は、ひとりもいなくなるようにさえできるんだ。世界じゅうの人を、透明人間という、べつの人種にかえてしまうことができるのだ。」
 怪老人の四角なメガネのおくに、二つの目がランランとかがやいていました。金色に光っているようにさえ、感じられました。老人はこの大発明に、もう、うちょうてんになっているのです。大友少年も、聞けば聞くほど、この発明の、あまりのおそろしさに、ブルブルと、からだがふるえてくるのを、どうすることもできませんでした。
 老人は、しばらくだまって、大友少年の顔を見つめていましたが、やがて、ニヤニヤと、みょうな笑いを浮かべながら、こんなことを言いました。
「どうだね、大友君、わしの弟子になりたくはないかね。そして、この大発明をたすける気にはならないかね。」
「それには、どうすればいいんですか。」
 大友君は、おそるおそるたずねました。
「きみが、透明人間第四号になってくれればいいんだよ。」
 老人は、やっぱりニコニコしながら、ギョッとするような、おそろしいことを言うのです。
「いやです。ぼく、いやです。透明人間にされるなんて、いやです。」
 大友君は、まっさおになって、さけびました。
「ハハハ……、きみはこわがっているね。なあに、ちっとも、こわいことなんか、ありゃしないよ。そこの手術台で、ひと晩ねむればいいんだよ。はじめに、ねむり薬を注射するから、何も知らないで、グッスリ、ねむってしまうよ。そうして、目がさめると、きみはもう、透明人間になっているのだ。だれにも見られないで、どんなことだって、できるのだ。きみは、童話の魔法使いになったと同じなんだ。え、どうだね。夢のような話じゃないか。こんなおもしろいことが、ほかにあると思うかね。」
「いやです。ぼくの顔やからだが、なくなってしまうなんて、いやです。おとうさんや、おかあさんは、ぼくにあえなくなるし、友だちとも、わかれなければなりません。そんなことは、いやです。ぼく、魔法使いなんかに、なりたくありません。」
 大友君は、ひっしになって、ふしょうちを、となえましたが、老人が、それに耳をかたむけるはずはありません。
「そんなに、いやかね。だが、いくらいやだと言っても、きみは、わしのとりこなんだ。逃げようとしても、この部屋には出口がない。ひみつ戸をあけるやりかたさえ、きみは知らないのだ。わしの命令にしたがうほかはないのだよ。さあ、いい子だから、おじいさんの言うことをきいて、じっとしているんだよ。」
 怪老人は、そう言いながら、いきなりイスから立ちあがると、パッとコウモリのはねのように、外とうのそでをひろげて、大友少年に飛びかかってきました。そして、アッというまに、こわきにかかえて、手術台のそばに行き、その上にねかせてしまいました。もう、いくらジタバタしてもだめです。怪老人の鉄のような腕にしめつけられて、身うごきさえできないのです。大友君は、とうとうかんねんの目をとじました。
 左の腕が、まくりあげられたのを知っていました。しかし、もう目をひらきません。もがいてみたって、どうにもならないのです。やがて、腕にチクリと、虫のさすようないたみを感じました。注射針がささったのです。
「さあ、これでいい。きみはすぐ、ねむくなるよ。」
 大友君はもう何も考えないで、じっとしていました。しばらくすると、からだじゅうが、だるくなってきました。なんだかいい気持ちです。ウツラウツラとねむくなってきました。どこからか、なつかしい子守うたが、きこえるような気がしました。そして、いつともなく、ふかいねむりにおちてゆくのでした。


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