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怪奇四十面相-骸骨的咒语
日期:2021-11-15 23:58  点击:357

骸骨の呪文(じゅもん)


 骸骨たちのうしろのかべは、三方とも、本だなになっていて、りっぱな本がギッシリつまっていました。それらの本のせなかの金文字が、ローソクの光にてらされて、チカチカと光っています。
 小林君は、この、なんともいえぬ、ふしぎな光景を見て、自分の頭が、どうかしたのではないかと、あやしみました。いったい黄金の骸骨なんて、この世にあるものでしょうか。しかも、その金色の三つの骸骨が、まるで生きた人間のように、話をしているのです。身うごきしたり、口をきいたりしているのです。そんなばかなことがあってもいいものでしょうか。
 一つの骸骨の、耳までさけた大きな口が、ガクガクと動きました。そして、みょうなしわがれた声が聞こえてくるのです。
「ゆなどき、んがくの、でるろも。」
 すると、その右がわの骸骨が、それにこたえるように、歯ばかりの口を、ガクガクやりました。
「むくぐろ、べへれじ、しとよま。」
 つづいて、三人めの骸骨が、口を動かしました。
「とだんき、すのをど、すおさく。」
 それから、また三人めの骸骨は、その同じことばを、いくども、くりかえしました。日本語でも、英語でも、フランス語でもないのです。ひょっとしたら、それは骸骨たちの住んでいる地獄のことばかもしれません。それとも、なにかの呪文なのでしょうか。金色の骸骨どもは、おそろしい呪文をとなえて、だれかを、のろっているのでしょうか。
「わからん。」
 とつぜん、ひとりの骸骨が、日本語をしゃべりました。すると、それにつづいて、あとのふたりの骸骨も日本語で言うのです。
「ウン、いくら考えても、わからん。」
「いくら、となえても、わからん。」
「よし、それじゃあ、今夜は、これだけにしておこう。おたがいに、もっとよく考えるんだね……。では、つぎの金曜日、夜の八時、また、ここであうことにしよう。」
 ひとりの骸骨が、そう言って、立ちあがりました。そのひょうしに、ローソクのほのおがゆれて、金色のどくろや、あばら骨が、キラキラと光りました。
「ウン、それがいい。毎日、毎日、考えるんだ。そして、また、金曜日に相談するんだ。どんなことがあっても、この秘密は、とかねばならぬ。」
「そうだ。どんなことがあっても。」
 あとのふたりも立ちあがりました。そして、三つの骸骨は、ゆっくりと、こちらへ、歩いてくるのです。
 小林少年は、それを見ると、そばにいた少女の手をとって、すばやく、ドアの前をはなれ、まっ暗な廊下のおくへ、身をかくしました。そこの、つきあたりのかべに、少女といっしょに、ピッタリからだをくっつけて、骸骨たちが出てきても、気づかれないようにしたのです。
 そうして、息をころしていますと、スーッとドアがひらいて、ローソクのひかりが、その出入り口のへんを、ボンヤリと、明かるくしました。そこへひとりの骸骨が出てきましたが、すると、パッと、黒い大きな布のようなものがひらめいて、金色の骸骨を、スッポリとつつんでしまいました。つまり、骸骨が黒いマントのようなものを、頭からかぶったのです。
 つぎに出てきた骸骨も、おなじように、黒いマントをかぶりました。三人めの骸骨も、マントをかぶりました。すると、金色の骨ぐみは、まったくかくれてしまって、そこには、まっ黒な三つの影法師(かげぼうし)のようなものが、立っているばかりでした。
 その三つの黒い影法師は、小林少年たちのかくれている廊下の、はんたいのほうへ歩いていき、やがて、階段をのぼるすがたが、その上にある電灯のひかりをうけて、ハッキリと見えました。
 小林少年は、三人の黒法師が、階段をのぼりきってしまったとき、そのあとをつけてやろうと、決心しました。少女が足手まといですが、こわがって、ふるえているのを、おきざりにするわけにはいきません。しかたがないので、少女の手をひいたまま、尾行をすることにしたのです。
 少女の手をかたくにぎって、だまって、ついてくるように、あいずをして、足音をしのばせて、階段をのぼりました。
 階段の上に頭だけだして、のぞいて見ますと、三つの黒法師は、うす暗い廊下を、むこうのほうへ歩いていくのが見えます。
 ひとりの黒法師は、とちゅうでわかれて、二階への階段をあがっていきました。あとの二つの黒法師は、そのまま、廊下をまっすぐにすすみ、つきあたりを右へまがりました。そこは、この建物の玄関の方角らしいのです。
 小林君は少女の手をひいて、階段から、廊下に出ました。そして、ささやき声で、少女にたずねます。
「きみのおとうさんのお部屋は、二階にあるんだろう?」
「ええ、そうよ。」
 少女が、ふるえ声で、かすかに、答えます。
「よし、それじゃ、こっちへ、おいで。あすこに玄関があるんだろう。ふたりのやつは、玄関のほうへ出ていったんだ。どこへゆくか、見とどけてやろう。こわいことはないよ。ぼくがついているから、だいじょうぶだよ。」
 小林少年は、そうささやいて、グングン少女の手をひっぱるのでした。

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