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铁塔王国的恐怖-奇怪的消失
日期:2021-11-22 23:52  点击:273

奇怪な消失


 ぶきみな妖虫の姿が、賢二少年たちの部屋の中に、消えてしまうと、広田は、にわかに、あわてだしました。もう夜の十時なので、勉強部屋にはだれもいません。にいさんの壮一君も、弟の賢二君もべつの部屋で、寝ていたからです。しかし、カブトムシは、その寝室までも、ゴソゴソと、はっていくかもしれません。そして、賢二君を、あの長い足でつかんで、どこかへつれさるかもしれないのです。
 広田はそれをおもうと、もうじっとしていられません。いきなり、勉強部屋の外に、かけよって、いましがた、カブトムシのはいっていった窓に、よじのぼり、まっ暗な、部屋の中へ、はいっていきました。
 部屋のすみに、身をかがめて、じっと耳をすましても、なんの音も聞こえません。あれだけの大きな虫が、もし部屋の中にいるとすれば、なにか音がするはずです。それが、シーンとしずまりかえっているのをみると、怪物はもう、部屋から廊下のほうへ、出ていったのかもしれません。
 広田は、おずおずとスイッチのところへ近よって、パッと電灯をつけました。やっぱり、部屋の中にはなにもいません。怪物は、廊下に出てしまったのです。
「たいへんです。だれか来てください。カブトムシが、カブトムシが……。」
 広田は、おもいきりどなっておいて、死にものぐるいの勇気をだして、廊下へ、とびだしていきました。
 廊下には電灯がついているので、一目でわかります。左は行きどまりですから、右のほうを見ればよいのですが、長い廊下には、なにもいません。廊下のむこうには、居間や茶の間や寝室があるのですが、広田のどなり声に、そのほうから、主人の高橋さんが、びっくりして、廊下へ、かけだしてきました。そのうしろに、おくさんや女中さんの姿も見えました。寝ていた壮一、賢二の兄弟もねまきのまま、外へ、とびだしてきました。
「広田、どうしたんだ。なにごとだ。」
 高橋さんが、大声で、たずねました。
「カブトムシです。おばけカブトムシが、この廊下へ、はいこんだのです。」
 広田は、息をきらしています。
「どこに? 廊下には、なにもいないじゃないか。」
「ほかへ行くひまはありません。ぼくはすぐあとから、おっかけたのですから。みょうだなあ、たしかに、この廊下に、いるはずなんだが。そちらの茶の間のほうへは行かなかったでしょうね。」
「くるはずがないよ。わたしたちがいたんだからね。」
「すると、どこにも、にげみちはないはずですね。ふしぎだなあ。」
「おまえ、夢でも見たんじゃないのか。」
「いいえ、けっして、夢なんかじゃありません。」
 広田はそこで、庭で見たことを、てみじかに話しました。
「広田さん、おとうさんの書斎のドアが、すこし、あいてるよ。あの中、見たの?」
 壮一少年が、目ばやくそれに気づいて、遠くから声をかけました。
 みんなの目がそのドアを見ました。たしかに、四センチか五センチひらいているのです。この廊下の、勉強部屋から、茶の間までのあいだには、右がわに主人の高橋さんの大きな書斎が一つあるきりで、左がわは、ずっと壁になっているのです。もし、怪物が、にげこんだとすれば、この書斎のドアのほかには、ないわけです。
「書斎の窓には、こうしがはまっている。もし、ここへはいったとすれば、袋のネズミだ。」
 高橋さんはそういって、広田に目くばせをしました。ドアをあけてみよといういみです。
 広田は、ドアのそばに近よりました。しかし、それをひらくのには、よほどの勇気がいります。かれは、そこに立ちすくんだまま、しばらく、ためらっていました。
 すると、そのとき、そのドアが、ひとりでに、すこしずつ、ひらきはじめたではありませんか。中から、ひらいているのです。
 それを見ると、人びとは、ギョッとして、あとじさりをしました。あのおそろしい妖虫が、まがった足で、ドアをひらいて、みんなの前に、とびだしてくるのだと思ったからです。
 ドアは、みるみる大きくひらいていきました。中はまっ暗です。そのやみの中から、ヌーッと出てきたのは、おばけカブトムシではなくて、意外にも、もうひとりの書生の青木青年でした。
「アッ、青木君か。カブトムシを見なかったか。」
 高橋さんが、しかりつけるように、いいました。
「いいえ、この部屋にはなにもいません。」
「きみは、まっ暗な書斎で、なにをしていたんだ。」
「本だなの本をおかりしに、はいったのです。いつでも、かってに読んでいいとおっしゃったものですから。本をさがして、電灯を消して、出ようとすると、廊下がさわがしくなったので、ちょっと、出そびれていたのです。」
 青木はそういって、手に持っていた一さつの本を見せました。法律の本でした。
「そうか。それならいいが、しかし、おかしいな。広田は、人間ほどの大きさのカブトムシが、この廊下へ、はいこんだというのだ。そして、わたしたちと広田とで、はさみうちにしたわけだから、にげみちは、この書斎のほかにはない。ところが、きみはなにも見なかったという。どうもふしぎだ。ねんのために、書斎の中をしらべてみよう。」
 高橋さんが、さきにたって、書斎にはいり、スイッチをおして、電灯をつけました。広田と、壮一君とが、そのあとにつづき、青木は本を持って、どこかにたちさりました。
 書斎の中には、なにもいませんでした。机の下や本箱のうしろなども、じゅうぶんさがしましたが、なにもいないのです。窓をひらいて、こうしをしらべてみましたが、どこもこわれてはいません。
「おい、広田君。きみはやっぱりまぼろしでも見たんだろう。もし、カブトムシが、家の中にはいったのなら、これほどさがして、見つからないはずがないじゃないか。きみは、こんやは、どうかしているよ。」
 高橋さんが、にが笑いをして、いいました。広田は、頭をかきながら、首をかしげるばかりです。しかし、広田は、あの怪物がまぼろしだったとは、どうしても、考えられません。たしかに妖虫が、はいこんできたのです。しかも、それがあっというまに、煙のように消えうせてしまったのです。
 広田は、なお、あきらめないように、書斎の中をグルグル歩きまわっていましたが、ふと、大机のまえに立ちどまると、その上にひろげてある、手紙の用紙のたばを、じっとみつめました。
「あっ、これ、先生がお書きになったのですか。」
 とんきょうな声に、高橋さんも、そこへ近よって、用紙を見ました。
「わたしじゃない。そこには白い用紙がおいてあったばかりだ。」
「それじゃ、やっぱりそうです。あいつが、書きのこしていったのです。」
 その用紙には、らんぼうな大きな字で、つぎのように書きなぐってありました。

图片1

 そして、その文句の下に、子どものいたずらのような、へたな絵で、一ぴきの黒いカブトムシが書いてありました。
「壮一、これは、おまえのいたずらじゃないだろうな。」
 高橋さんが、壮一少年をよんで、その用紙をよませました。
「ちがいます。ぼくでも賢ちゃんでも、そんなもの書きません。」
「青木はどうした。まさか青木が書いたのでもあるまいが……。」
 高橋さんは、そういって、あたりを見まわしましたが、書生の青木の姿が見えません。
「青木君、青木君。」
 高橋さんの声におうじて、壮一、賢二の二少年も、かんだかい声でさけびました。
「青木さーん……。」すると、どこか遠くで、「ハーイ。」という声がして、バタバタと階段をおりる音がして、やがて、青木が、両手で目をこすりながら、そこへ、やってきました。
 そして、ときならぬ夜ふけに、みんなが書斎に集まっているのを、がてんがいかぬという顔つきで、キョロキョロしています。
「青木君、どこへ行ってたんだ。」
「はい、ぼく、自分の部屋で、寝ていました。」
「なに、寝ていたって? バカをいいなさい。いましがた、この書だなから、本をさがして、出ていったばかりじゃないか。」
「いいえ、ぼくは書斎へはいったおぼえはありません。たしかに、自分の部屋で、寝ていたのです。」
「まさか、きみは、ねむったまま、歩きまわる夢遊病者(むゆうびょうしゃ)じゃあるまいな。」
「そんなことは、一度もありません。」
 さあ、わからなくなってきました。青木がほんとうに、寝ていたとすると、さっき書斎から出ていったのは、何者だったのでしょう。あれは青木とそっくりでした。あんなによくにた別人があるのでしょうか。
 読者諸君も考えてみてください。頭のいい読者には、このなぞが、もうとけたかもしれませんね。
 これはでたらめではありません。ちゃんととけるなぞなのです。しかし、それをとくのは、もうすこし、あとにしましょう。


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