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灰色巨人-姐妹盗贼
日期:2021-11-28 23:57  点击:296

怪少女


 それからまた十日ほどは、なにごともなく、すぎさりました。「灰色の巨人」の手下は、モーターボートでにげさったまま、ゆくえがわかりません。「灰色の巨人」という首領が、どんなやつだか、どこにいるのか、少しもわからないまま、日がたっていったのです。
 ところが、ある夜のこと、銀座の有名な宝石商の大賞堂(たいしょうどう)に、ふしぎな事件がおこりました。
 夜の七時、銀座通りはネオンにかがやき、なみのような人通りに、わきかえっていました。大賞堂の店にも、おおぜいの客があり、店員はいそがしく立ちはたらいていました。
 そこへ、ひとりのりっぱな洋装の若い女の人が、はいってきました。そのあとから、かわいらしい少女がついてくるのです。親子ではありません。たぶん少女は若い女の人の妹なのでしょう。
 女の人は、ガラスばりの売り場の前に立って、店員に真珠の首かざりを見せてくれとたのみました。
 店員は、女の人が、ひじょうにりっぱな服をきているので、だいじなお客さまと見て、ていねいにあつかい、いちばん高価な首かざりのケースを、いくつも、ガラス台の上にならべてみせました。
 女の人は、そのケースを、一つ一つ、ひらいて見ていましたが、ちょうどそのとき、店の外で、「ワーッ。」という叫び声がしたかとおもうと、にわかに、そのへんがさわがしくなり、大賞堂のショーウィンドーの前は、みるみる黒山の人だかりになりました。
 店員がとび出していってみますと、ひとりの青年が、そこにたおれていて、それをとりまいて、人だかりがしているのでした。
「どうしたんだ。しっかりしたまえ。」
 ひとりの紳士が、たおれた青年をだきおこして耳のそばで、どなりますと、青年は、ふさいでいた目をひらいて、キョロキョロ、あたりを見まわし、はずかしそうな顔で、
「だれかが、パッとぶっつかったひょうしに、目まいがして、たおれたのです。もういいんです。すみません。」
とつぶやいて、よろよろと立ちあがり、まわりの人たちをかきわけるようにして、どこかへたちさってしまいました。
 大賞堂の客たちも店員たちも、そのさわぎに、みんな入口へ出ていましたが、青年がたちさるのを見て、売り場に帰りました。
 さっきの若い女の人も、もとの売り場にもどって、また首かざりを見はじめましたが、しばらくすると、気にいった品がないらしく、またくるからといって、そのまま店を出ていこうとしました。
 そのとき、店員は、ガラス台の上に出してあった首かざりのケースを、一つ一つあらためていましたが、ふと、びっくりした顔になって、大きな声で、
「もしもし、あなた、ちょっとお待ちなすって!」
と、いま店を出ようとしている女の人をよびとめました。
「あたし? あたしにご用なの?」
 女の人は、けげんな顔で、売り場にもどってきました。
「えへへへ……、どうもすみません。このケースの中の首かざりが、なくなっておりますが、もしや、なにかのおまちがいで……。」
 店員は、にやにや笑いながら、いいにくそうにいうのでした。
「あら、あたしが、持っているとでもおっしゃるの? へんなこといわないでよ。まだ、まんびきするほど、おちぶれちゃいないわ。なんなら、からだをしらべてください。さあ、おくへいきましょう。そして、女の店員に、からだをしらべてもらいましょう。」
 たいへんなけんまくです。店員は、青くなって、なにか口の中で、もぐもぐいっています。
 そのとき、そばにいたべつの店員が、女の人のかかりの店員の耳に口をよせて、なにか、ささやきました。
「あ、そうだ、あの女の子がいない。お客さまが、おつれになったおじょうさんが見えませんが、どこへいらしったのでしょうか。」
 女の人は、それをきくと、びっくりしたように、
「え、おじょうさんですって。あたし、女の子なんかつれていませんわ。ひとりできたのよ。」
「でも、さっきまで、おそばに、かわいいおじょうさんが、いらっしゃいましたが……。」
「ああ、そんな子が、いたようですね。でも、あれは、あたしがつれてきたのじゃない。まったく知らない子ですよ。」
 それをきくと、店員たちは、にわかにさわぎだしました。そして、二―三人の店員が、あわてて表へとび出していきましたが、少女のすがたは、もうどこにも見えません。
「ちくしょう、やられた。あんなかわいい顔をして、あいつ、まんびき少女だったんだな。お客さまのおつれのようなふうをして、はいってきたので、まんまといっぱいくわされてしまった。……えへへへ、まことに、あいすみません。とんだいいがかりをもうしまして、どうかごかんべんねがいます。」
 店員は、しきりにおじぎをして、おわびをするのでした。
「そう? うたがいが、はれればいいわ。じゃ、あたしは、こういうものですからね。なにか用事があったら、いつでもたずねてきてください。」
 女の人は、そういって、店員に名刺をわたすと、そのまま、たちさってしまいました。
 そのあとで、店員たちは、からっぽになった首かざりのケースを取りかこんで、ガヤガヤ、いっています。
「おい、このケースの中に、へんな紙きれがはいっているぜ。おや、なんだかえんぴつで書いてある。」
「まんびき少女が、手紙をのこしていったのかな。」
 みんなでひろげて読んでみますと、そこには、つぎのようなおそろしい文句がしるしてありました。

图片2

 さっきのあやしい少女は、灰色の巨人の手下だったのです。表で、さわぎをおこした青年も、やっぱり手下のひとりだったかもしれません。そのさわぎにまぎれて、少女は首かざりをぬきとり、手紙をのこして逃げさったのです。
 ああ、灰色の巨人! いったいそれはなにものでしょうか。そして、これから、どんなおそろしいことを、はじめるのでしょうか。

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