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灰色巨人-夜搜女罪犯
日期:2021-11-28 23:58  点击:289

少女のゆくえ


「にじの宝冠」をかぶった少女が、神社の森のなかへ逃げこんだときには、神社の表門にも、うら門にも、少年探偵団員たちが見はっていたのですから、神社の外へは、ぜったいに逃げられなかったはずです。少女は神社の森の中の、どこかに、かくれているにちがいないのです。
 そこで、少年たちは、さいごに、その少女の捜索をすることになりましたが、そのときは、もう日がくれて、あたりは、まっ暗になっていました。ことに神社の中は、大きな木がしげっていて、ところどころに、街灯が立っているばかりですから、この捜索は、じつにこんなんです。
 小林団長は、神社の表門と、うら門にいる五人ずつの団員には、そのまま見はりをさせておいて、あとの九人の団員を、うら門の外へ集めました。
「これからサーカスの女の子を、さがすんだよ。みんな探偵七つ道具の中の、懐中電灯を出して。」
と命じました。探偵七つ道具というのは、少年探偵団員が、いつも身につけている小さい道具類で、万年筆型の望遠鏡、虫めがね、磁石、万能(ばんのう)ナイフ、黒いきぬ糸のなわばしご(まるめると、ひとにぎりになってしまいます。)小型の手帳、万年筆型の懐中電灯などです。
 少年たちは、その万年筆型の懐中電灯をとりだして、スイッチをおしました。すると、小林団長のをあわせて、十個の豆電灯が、ほしのように光って、そのへんがパッと明るくなったのです。
 そのとき、ひとりの少年が、前にでて、小林団長に、よびかけました。
「団長、いくら懐中電灯があっても、あの広い、まっ暗な森の中を、さがすのは、むずかしいと思います。こんやは見はりのものだけのこしておいて、あすの朝、捜索したほうがいいと思います。」
 いかにも、もっともなことばでした。広い森の中を、二十人の少年で、さがすのは、むりなはなしです。すると、小林団長がそれに答えました。
「そう思うのは、もっともだが、この捜索は夜のほうがいいんだよ。それには、わけがあるんだ。ぼくは明智先生から、あることを、おそわっているんだよ。だいじょうぶだから、ぼくの命令のとおりに、やってくれたまえ。」
 そういわれると、だれも、異議をとなえるものはありません。そこで、小林少年は、つぎのように、さしずをしました。
「みんな懐中電灯を消して、ぼくについてくるんだよ。どんなことがおこっても、ぼくがつけろというまでは、懐中電灯をつけてはいけない。わかったね。それから、神社の中の、ある場所へいったら、みんなが、はなればなれになって、木のかげにかくれて、ぼくがよぶまで、じっと、待っているんだよ。へんなことがおこっても、むやみに、とびだしちゃいけない。いいかい。さあ、それじゃあ、出発!」
 小林団長をあわせて十人の少年が、しずかに神社のうら門をはいっていきました。
 うら門には、五人の少年団員と、三人の警官が、見はりばんをつとめていました。小林団長は、その人たちにむかって、
「きみたちは、やっぱり、ここで見はっててくれたまえ。おまわりさんにも、おねがいします。女の子は、ぼくたちで、きっと、見つけだしておめにかけます。もし見つけたら、よびこの笛をふきますから、そうしたら、おまわりさんたちも、かけつけてください。おねがいします。」
といいのこして、森の中へはいっていきました。警官たちは、中村警部から、まえもって、そのことを聞いていましたので、小林少年のことばに、うなずいて見せました。
 十人の少年は、暗い森の中を、足音をたてないようにして、社殿の方へすすんでいきます。
 やがて、社殿の前に出ましたが、外に大きな石のコマイヌが、ふたつ立っています。先にたって歩いていた小林団長は、うしろをむいて、ささやき声でいいました。
「みんな、ばらばらになって、かくれるんだ。そして、あのコマイヌを、よく見ているんだ。長くかかるかもしれない。でも、しんぼうづよく待っているんだよ。そのうちに、きっと、びっくりするようなことがおこるからね。しかし、なにがおこっても、ぼくが、命令するまでとびだしちゃいけないよ。」
 そして、みんな、バラバラになれという手まねをしました。少年たちは、それぞれ、コマイヌのそばの木のみきのうしろへ、かくれました。小林団長も、社殿の高い床下に、身をかくして、じっと、ふたつのコマイヌをみつめていました。
 コマイヌというのは、むかし中国からつたわってきた、神さまのばんをする石のイヌですが、イヌといっても、おまつりのシシのような、おそろしい顔をしています。この神社のコマイヌは人間ほどの大きさで、まえ足を立て、うしろ足をまげて、四角な石の台の上に、いかめしく、すわっています。石でそういうかたちが、ほってあるのです。
 少年たちは、めいめいの、かくれ場所から、そのふたつのコマイヌを、じっと見つめていました。
 長い長いあいだ、なにごともおこりませんでした。あたりはまっ暗で、しいんと死んだように、しずまりかえっています。遠くの街灯の光で、ぼんやりとコマイヌが見えています。それを、じっと見ていると、なんだか、えたいのしれない、まっ黒な怪物のように、おもわれてきます。
 みんな、はなればなれになっているものですから、少年たちは、だんだん、こわくなってきました。うしろのやみの中から、おそろしいばけものが、しのびよってくるのではないかと、せなかが、ゾーッと寒くなってくるのでした。
 そればかりではありません。黒い怪物のようなコマイヌが、いきなり動きだして、あのシシとそっくりのこわい顔で、こちらへ、とびかかってくるのかと思うと、いよいよ、おそろしくなってきました。
 もう夜が明けるのではないかと、思うほど、長いあいだ待ちました。でも、ほんとうは、一時間もたっていなかったのです。
 そのとき、じつにおそろしいことが、おこりました。

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