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黄金豹-千年魔豹
日期:2021-11-28 23:58  点击:280

千年の魔豹


 そいつのからだは、電灯の光をうけて、まぶしいほどギラギラと、金色にかがやいていました。恐ろしく大きな豹です。あと足で立ちあがって、前足を窓のしきいにかけ、部屋の中を、グッと、にらみつけ、まっ赤な口を開いて、「えへへへ……。」と笑っているのです。
 動物は笑えないはずです。豹が人間のような声で笑うなんて、聞いたこともありません。それだけに、なんともいえないほど、きみが悪いのです。
 小林、園田少年は、へたへたと、イスにたおれこんだまま、身動きすることもできません。目は怪獣の方にひきつけられて、そらそうとしても、そらすことができないのです。
 怪獣は、ニューッと窓の中へ、その恐ろしい顔をつきだして、人間のことばで、ものをいいはじめました。しかし、それは人間の声ではなくて、なにかが、すれあうような、ひどくかすれた音でした。ささやき声を、ラウド=スピーカーで大きくしたような、じつにいやな音なのです。
「園田君、きみのおとうさんは、豹の絵や豹のおきものや、豹の毛がわや、豹に関係のあるものなら、なんでも集めているね。それほど豹がすきなんだね。だからおれは、きみのおとうさんが大すきだよ。
 ところでね、おれは、おとうさんが、いちばんだいじにしている、豹のおきものがほしいのだ。きみも知っているだろう、銀のおりにはいった金の豹さ。二十センチほどの金むくの豹のおきものさ。それが、銀でこしらえた、かわいらしいおりの中にはいっている、あれだよ。純金のめかただけでもたいしたものだが、からだの黒いはんてんには、とびきりの黒メノウがちりばめてある。それよりも目だよ。あの金の豹の二つの目はダイヤモンドだ。一つが三カラット以上もある青ダイヤだ。二つのダイヤだけでも何百万円という値うちだよ。
 あのかわいらしい豹は、まっ赤な口を開いているが、その口の中には、ルビーがならべてあるのだ。
 それに、豹の彫刻がたいしたものだ。日本一の名人が作った美術品だからね。おとうさんは、けっして、あれを売らないだろうが、もし売れば、何千万円というしろものだ。おれは、あれをもらいたいのだよ。いや、もらうことにきめたのだよ。
 おとうさんに、そういっておいてくれ。二、三日のうちに、かならず、もらいにくるからってね。おれは、千年のこうをへた魔法の豹だ。だから、こうして、人間のことばもしゃべれるのだよ。おとうさんが、いくら用心しても、きっと、盗みだしてみせる。おまわりさんが、何人きたって、おれは、ちっともこわくない。おれは魔法使いだからねえ。へへへ……、それじゃ、約束したよ。おとうさんによろしく。……あばよ。」
 怪獣は、なにかをすりあわせるような、異様な声で、しゃべりたいだけしゃべってしまうと、サッと、窓のそばから身をひいて、庭の闇の中に、姿をかくしてしまいました。
 ふたりの少年は、怪獣が見えなくなっても、しばらくは、からだがすくんで、立ちあがることもできませんでしたが、やっと元気を出して、部屋をとびだすと、園田君のおとうさんの部屋にかけつけて、今の恐ろしいできごとを知らせました。
 そこで、うちじゅうが、おおさわぎになり、すぐに警察へ電話をかけたものですから、近くをまわっていたパトロール=カーがやってきて、大ぜいの警官が、手に手にピストルをかまえ、懐中電灯をふりてらして、広い庭のすみからすみまで捜しまわりました。しかし、ついに黄金の豹を発見することはできませんでした。怪獣は、またしても忍術を使って、消えうせてしまったのです。
 おとうさんの園田さんは、いちばんだいじにしている純金の豹を、怪獣が盗みにくるというので、心配でしかたがありません。それからというものは、毎日、五人の警官が、園田さんのやしきの、うち外を見はってくれることになりましたが、それでも、まだ安心できないので、大学にかよっている、ふたりの書生のほかに、会社から、柔道の段を持っている社員をふたりよんで、とまりこみで、番をさせることにしました。
 それから、園田さんのしたしい友だちが、せわをしてくれた、庭ばんのじいやの助造(すけぞう)というのが、なかなか、腕っぷしが強くて、先のとがった長い鉄棒を持って、庭をぐるぐるまわることにしました。もし黄金豹があらわれたら、その鉄棒でつき殺してやるのだと、おそろしくはりきっています。
 園田さんのやしきには、大きな絵画室があって、そこに、日本画と西洋画の豹の絵ばかりが、たくさん、かけならべてあるのですが、怪獣にねらわれた純金の豹のおきものは、その絵画室のまん中の、ガラスばりの陳列台の中に、入れてあるのです。でも、そんなところへ出しておいてはあぶないので、どこかへかくさなければなりません。園田さんは、そのかくし場所を、いろいろ考えたすえ、じぶんの寝室の(えん)の下へ、うずめることにしました。
 しかし、かくしたことを、怪獣に気づかれてはたいへんですから、だれにも知られないように、仕事をしなければなりません。といって、園田さんひとりで縁の下をほることはむずかしいので、そういうことになれた、庭ばんの助造じいさんだけに、てつだわせることにしました。ほかのうちの人や、警官などには、すこしも知らせないつもりです。武夫君でさえ、あとになって、やっとそれがわかったほどです。
 園田さんは、なぜ名探偵明智小五郎に相談しなかったのでしょうか。園田武夫君は少年探偵団の副団長ですから、小林団長といっしょになって、しきりにそれをすすめたのですが、園田さんは、警察がまもってくれるから、だいじょうぶだといって、明智探偵にたのもうとしませんでした。あとになって、たのまなかったことを、たいへん後悔しましたが、もうそのときはおそかったのです。
 純金の豹の入れてある銀のおりは、はば三十センチ、高さ二十センチほどの、小さなものですが、まず、それをビニールで、いくえにもつつみ、頑丈(がんじょう)な木箱に入れました。かくし場所は、園田さんの寝室の日本ざしきの、縁の下です。たたみをあげ、ゆか板をはずして、そこへ助造じいさんがシャベルを持ってはいり、下の土を深くほって、木箱をその穴の底へうずめ、上から、もとのとおりに土をかぶせたのです。
 園田さんは、二、三日のあいだ、その寝室から外へ出ないことにしました。食事もそこへ持ってこさせ、洗面器や水をそこへはこばせて、顔も、部屋の中であらうという、用心ぶかさです。つまり、純金の豹の箱をうずめた、たたみの上にすわりつづけ、夜はそこへふとんをしかせて寝るわけです。
 そして、その寝室のまわりの、うちの中には、ふたりの書生と、ふたりの社員が、たえず見はりをしていますし、武夫君も、武夫君のおかあさんも、大ぜいの女中たちも、みんなこちらのみかたです。さらに家のまわりの庭には、五人の警官が歩きまわり、鉄棒を持った助造じいさんが、目を光らせています。寸分(すんぶん)のすきまもない厳重な警戒です。
 これほど用心をすれば、いくら怪獣でも、どうすることもできないだろうと、園田さんは、ひとまず安心していたのですが、なにしろ、相手は千年のこうをへた怪獣です。どんな魔法を使って、純金の豹を盗みださないものでもありません。安心するのはまだ早いようです。
 それが証拠に、黄金豹が武夫君の部屋の窓の外に、あらわれたあくる日から、園田さんのやしきには、じつにきみの悪い、恐ろしいできごとが、つぎつぎとおこるのでした。

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