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天空魔人-3位客人
日期:2021-12-11 23:34  点击:274

三人の客


 幸ちゃんの事件があったお昼すぎ、トキワ館の洋室の応接間に、三人のおとなと、三人の少年が集まって、事件のうわさをしていました。幸ちゃんが、巨人にさらわれた話は、またたくまに、村じゅうにひろがって、トキワ館のお客さんも、みんな、それを知っていたのです。
 応接間に集まっていたのは、小林、井上、野呂の三少年と、白犬の事件があった夜、野天ぶろで知りあいになった東京からの客と、その友だちふたりです。
 野天ぶろで知りあった人は、東京の自転車製造会社の重役で、三谷(みたに)さんというのでした。ふたりの友だちも、同じ会社の人でした。三人の少年は、この人たちと、おふろなどでよく出あうので、だんだん、したしくなり、じょうだんをいったり、ふざけたりするほどになっていました。
「ぼくたち三人は、あす東京へ帰るよ。べつに、巨人がこわくて、逃げだすわけじゃないがね。」
 三谷さんが、小林君の顔をみて、笑いながらいいました。三人のおとなは、みんな、宿のゆかたにどてらをかさねて、長いいすに、ぐったりと腰かけているのです。
「これは、ここへきたときからの予定なんだ。あさって、東京に、どうしても出なければならない会があるのでね。」
 三谷さんの友だちのひとりが、弁解するようにつけくわえました。すると、もうひとりの友だちが、
「きみたち少年探偵団の三人は、まだ、滞在しているんだね、だが、なるべく早く帰るほうがいいよ。いくら探偵団でも、巨人の腕には、かないっこないからね。ハハハ……。」
と、からかうのでした。しかし少年たちも負けてはいません。井上君は、肩をいからせて、
「おじさんたち、少年探偵団の歴史を知らないから、そんなことをいうんだよ。ぼくたちは今までに、ずいぶん怪物をたいじしてきたからね。青銅の魔人、透明怪人、宇宙怪人、みんな、おそろしい怪物なんだよ。」
と、じまんしました。小林団長も、それにつづけて、
「ぼくたちだけで、たいじしたんじゃない。ほんとうは明智先生なんです。おじさんたち、明智先生を知っているでしょう。」
「うん、新聞でね。きみたちは、あの名探偵の弟子なんだね。それで、こんどの巨人の腕の秘密を、とこうというわけか。」
「ええ、そうなんです。もし、ここに明智先生がおられたら、きっと、巨人の秘密を、とかれると思います。けっして、逃げだしたりなんかしないと思います。ですから、ぼくたち、もうすこしここにいて、やってみるんです。」
 さすがに小林団長は、けなげなことをいいます。
「ふうん、感心、感心。まあ、せいぜいやってみるがいいだろう。だが用心するんだぜ。相手は、おっそろしく、でっかい巨人だからね。つかみころされないようにね。」
 三谷さんが、またからかいました。
 おくびょうもののノロちゃんは、部屋のすみの方で、青い顔をして、この話を聞いていましたが、そのとき、やっと、ふるえ声で口をはさみました。
「ぼく、どうしても、わからないな。そんなでっかい巨人なんて、この世界にいるんだろうか。キングコングやゴジラなんて、みんな、つくり話でしょう。動物でさえ、そんな大きなのはいないんだから、人間の巨人なんて、いるはずがないんだがなあ。」
「ハハハ……、ノロちゃんは、おくびょうもののくせに、いいことをいうね。それじゃきみは、おばけがこわくないのかい。」
 三谷さんの友だちが、いじわるをいいました。
「うん、おばけはこわいよ。おばけなんて、いないことは、よく知ってるんだけど……やっぱり、こわいから、しかたがないや。」
 それを聞くと、みんなが大笑いをしました。しかし、ノロちゃんは、まじめな顔で、
「まだわからないことがあるんだよ。腕だけで、からだのないやつってないでしょう。だから巨人には顔も、腹も、足もあるはずでしょう。ね、だから、そのでっかい足で、いろんなものを、ふんづけるはずじゃないかい。そういう、ふんづけたあとが、一つもないのがおかしいんだよ。」
と、もっともなことをいうのです。
「ハハハ……、そこがばけものだよ。巨人は、腕ばっかりで、からだがないのかもしれない。それにノロちゃんは、おとといの晩、犬がつかみあげられるのを、その目で見たんだろう。こんなたしかなことは、ないじゃないか。」
「うん。でも、巨人の腕は、よく見えなかったよ。まっ黒な腕だから、見えなかったのかもしれないけど。」
 それから、またしばらく、巨人のうわさをしたあとで、みんなは明るいうちに、野天ぶろへはいろうといって、ぞろぞろと出かけました。
 そのあくる日の午後、三谷さんたち三人は、東京へ出発しました。そして、その晩のことです。前代未聞(ぜんだいみもん)の大事件がおこったのは……。
 十時半ごろでした。そのとき、小林君たち三人は、トキワ館の二階の八畳の部屋に、(とこ)をならべて、もう寝ていたのです。うとうととして、ふと気がつくと、下の旅館の事務室の方から、がやがやと、さわがしい声が聞こえてきました。どうもただごとではありません。
「おい、井上君、ノロちゃん、なんだろう。ばかにやかましいね。」
「うん、へんだね。また、巨人の腕があらわれたんじゃないかしら。」
 井上君が、ねむそうな声でこたえました。
「えっ、巨人の腕だって?」
 ノロちゃんが、とんきょうな声をたてて、ピョコンと、ふとんの中からとびおきました。もう、がたがたふるえているのです。
「下へいってみよう。」
「うん、そうしよう。」
 小林君と井上君とは、ねまきのまま、部屋を出ていきます。
「ぼくひとり、おいていっちゃあ、いやだよ。ぼく、こわいよう。」
 ノロちゃんは、あわてて、ふたりのあとを追うのでした。
 下の事務室には、大ぜいの人が集まっていました。まん中に駅員の服をきた人が立っています。そのまわりに、トキワ館の主人夫婦、番頭(ばんとう)、女中さんなどがむらがり、とまり客も、四―五人まじっていました。
 駅員が、なにかおそろしいニュースを、持ってきたらしいのです。
 よく聞いてみますと、それはつぎのような、おどろくべき事件でした。

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