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天空魔人-货车升天灯
日期:2021-12-11 23:34  点击:255


貨車昇天(しょうてん)


 巨人の腕は、動物や人間をさらったばかりでなく、こんどは、あの大きな重い貨物列車を、雲の上へつかみあげていったのです。キングコングやゴジラは、飛行機や電車をつかみましたが、巨人の腕も、あの怪獣たちと同じ力をもっているのでしょうか。
 矢倉温泉の駅から、東京の方に近い第一番めの駅は、横目(よこめ)駅で、そこに、横目町という、小さい町があるのです。
 その横目駅を、今夜の八時四十七分に出た貨物列車が、矢倉駅へ、九時につきました。蒸気機関車にひかれた、十五両連結の貨物ばかりの列車です。
 その貨物列車の、機関車からかぞえて、七両めに、あるお金持ちが、借りきっている貨車が、つながれていました。そして、その貨車は、矢倉駅でつみおろしをすることになっていたのです。
 そのお金持ちは、矢倉村の近くに、大きな別荘を建て、その中へかざるために、東京から、たくさんの美術品を、矢倉駅へ送ったのです。値打ちにして、何千万円という美術品です。
 その美術品は、国鉄から私鉄への乗りかえ駅で、つみかえられましたが、そのときは、大ぜいの人が厳重に見はりをして、私鉄の貨車につみこみ、貨車の戸錠(とじょう)をおろし、封印(ふういん)までしたのです。
 そして、その貨車が、横目駅をぶじに通りすぎたことも、まちがいありません。
 横目駅の駅長は、七両めの貨車に、貴重品がはいっていることをよく知っていましたから、その貨車には、とくべつに気をつけたのです。
 封印のある貨車は、たしかに、七両めにつながっていました。駅長ばかりでなく、三人の駅員が、それを見たのです。
 ところが、列車が九時に矢倉駅について、いざ、つみおろしをしようとすると、その封印つきの貨物車が、一両だけ、消えうせていました。十五両つなぎの列車が十四両になっていたのです。
 矢倉駅の駅長はすぐに横目駅や、その前の駅へ電話をかけてたしかめましたが、どこの駅でも、たしかに十五両連結だったという答えです。
 そして、封印つきの貨車が七両めにつながれていたことも、まちがいないというのです。
 長い列車の、まん中の一両だけが、一つの駅からつぎの駅へいく間に、消えてなくなるなんて、人間の頭では、考えられないことです。鉄道はじまっていらい、一度も例のないことです。
 機関士も車掌(しゃしょう)も、この鉄道に、長いことつとめている、信用のおける人たちでした。そのふたりは、横目駅と矢倉駅の間で、列車は、一度もとまらなかったし、あやしいこともなかったというのです。だいいち、とちゅうで列車をとめて、貨車をはずしたりしていたら、きまった時間に矢倉駅へつくことはできないはずです。それから、矢倉駅と横目駅の両方から、蓄電池(ちくでんち)で動くトロッコを出して、二つの駅の間の線路をしらべましたが、なんのかわったようすもないことがわかりました。貨車はどこにも、のこっていなかったのです。
 あの大きな貨車が、煙のように消えうせてしまうなんて、人間の知恵では考えられないことです。
 この事件には、なにか、人間いじょうの力が働いているのではないでしょうか。
 そこまで考えてくると、もうほかに答えはありません。
 駅長も、警察分署長も、村長も、村のおもだった人たちも、すぐに「巨人の腕」のことを思いだしました。
 あのばけものなら、人間にできないことも、やすやすと、やってのけるにちがいないのです。
「しかし、巨人の腕が、つかみとったとすれば、列車ぜんたいが、ひどくゆれただろうが、機関士も車掌も、それを感じていないのはへんだね。」
「そこが魔物だよ。人間の知恵では、考えられないことが、あのばけものには、ぞうさなくやれるのかもしれない。」
「だが、貨車を一つだけつかみあげたとすれば、七両めからあとの貨車は、連結が切れてしまうから、そこにとりのこされたはずじゃないか。」
「それが、やっぱり人間の知恵だよ。あの巨人なら、貨車をぬきとって、前の車とあとの車を、手ばやく連結することだって、わけはないかもしれない。
 なにしろ相手は、でっかいやつだ。ちょうど、こどもが、オモチャの汽車をいじるようなもんだからね。」
 そんな会話が、ほうぼうでくりかえされました。そして、村の人たちの八割までが「巨人の腕」のしわざにちがいないと、信じるようになったのです。
 美術品の持ち主のお金持ちは、相手がばけものであろうが、人間であろうが、美術品をとりもどしてくれた人には、百万円のお礼をすると、警察分署長や村長に話し、それが村じゅうにつたわりました。
 また、土地の新聞にも、そのことが、でかでかと書きたてられたのでした。

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