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天空魔人-大魔术
日期:2021-12-11 23:40  点击:292

大魔術


 小林君の説明はつづきます。
「登り坂が、おわったところに、製材会社の支線があります。そこで、レールが二またにわかれているのです。そのそばに、レールをあっちへやったり、こっちへやったりするポイントがあります。ポイントは、ふつう、駅の構内にあるのですが、あの支線は駅からとおいので、レールのすぐそばにとりつけてありますね。絵に書けば、こんなふうです。
图片3
 この支線とのわかれめのポイントのところに、三人の犯人のうちで、いちばんすばやいやつが、待ちかまえています。トラックにのって、さきまわりをしているのです。この役目は、ぼくでしょうね。ぼくが、井上君やノロちゃんより、すばしっこいかどうかわかりませんけれどね。
 そこで、ぼくが、ポイントのところで待ちかまえていますと、むこうから、貨物列車がやってきます。坂を登りきったところですから、まだ、そんなに速力は出ていません。
 ぼくは、ポイントのぼうをにぎって、いつでもたおせるように身がまえをします。機関車がレールのわかれめを、とおりすぎました。つぎに、一号車二号車、その二号車の車が、レールのわかれめを、とおりすぎたしゅんかんに、ぼくは、パッとポイントをたおします。すると、レールが支線の方につながるので、三号車は、本線をはなれて、支線の方へはいっていきます。
 そして三号車が、わかれめをとおりすぎたしゅんかんに、ぼくはまた、ポイントをパッともとにもどします。そうすると、つぎの四号車の車は支線の方へまがらないで、まっすぐに本線を進んでいくわけです。この絵のとおりですよ。
图片4
 ね、わかるでしょう。ほんとうに、いちかばちかの仕事です。だから、この役目は、すばやい人でなくてはつとまらないのですよ。そうして、三号車が支線にはいっても、二号車と四号車とは、ワイヤロープでつながれていますから、四号車からあとの貨車も、そのまま進んでいくのです。
 三号車にいた井上君はどうするかといいますと、支線にはいるまえに、二号車のうしろに、とりすがっているのです。貨車のうしろには、列車の屋根へ登るための鉄ばしごが、とりつけてありますから、この鉄ばしごにすがりついているのです。
 さて、ここで、ノロちゃんの役目があります。いやノロちゃんは、からだが小さいし、力もないが、ほんとうの犯人は、もっと大きくて、強いやつです。その犯人を、かりに、ノロちゃんとしますと、ノロちゃんは、支線のわかれめと製材会社との間にある森の中に、待っているのです。ノロちゃんも、ぼくといっしょに、トラックで、さきまわりをしていたわけですよ。そして、そのトラックも、支線の森の中にかくしてあるのです。
 ぼくがポイントをたおして、支線に送りこんだ三号車は、いきおいがついているので、ぐんぐん進み、ちょうど森のへんで、速力がにぶってきます。ノロちゃんは、その貨車へとびついて、ブレーキをふむのです。
 国鉄の列車は、みんな、圧縮空気のブレーキですが、いなかには、まだ足ぶみブレーキの貨車がのこっています。美術品のつんであったのは、その旧式の貨車だったのです。こんなふうに、貨車の横に、長い鉄のぼうがあって、人間が、その上にのって、ぐいぐいふめば、ブレーキがかかるようになっているのです。ノロちゃんは、そのブレーキをふんで、貨車を、森の中でとめる役です。
 そこへ、ぼくもかけつけて、ふたりで、貨車の中の、めぼしい美術品をはこびだし、待たせておいたトラックにつみこみ、すぐに東京の方へ、出発するというわけです。
 これで、目的をはたしたのですが、本線を進んでいる列車のほうに、まだ仕事が、のこっています。井上君は、それをやらなければなりません。
 井上君は、二号車のうしろの鉄ばしごにとりすがったまま、矢倉駅の近くまでいきます。そして、機関車がブレーキをかけて速度をゆるめるのを待っています。長い貨物列車は、駅のずっとてまえから、ブレーキをかけるのです。で、機関車がブレーキをかけますと、二号車までは速度がおそくなります。ところが四号車からあとは、ロープにひかれているのですから、いきおいがついていて、ぐんぐん進みますから、前の貨車にドシンとぶっつかるわけです。
 井上君は、それを待っているのです。そして、二号車と四号車とが、ぶつかってくっついたときに、二つの貨車の連結器を、ガチャンとはめて、両方の連結器にくくりつけてあったロープをとくのです。ほそい針金で巻いてあるのを、ペンチで、切りはなしてしまうのです。そして、ロープをレールの横へなげだしておいて、自分も列車からとびおり、ロープをエッチラオッチラと引っぱって、近くの木のしげみの中へかくれてしまうのです。
 こうすれば、長い列車のまん中の貨車を一両だけ盗みだせるわけですよ……。
 ああ、くたびれた。ぼくの説明は、これでおしまいです。話すと、ひどくややっこしいけれど、やってみれば、わりにかんたんかもしれませんよ。でも、ぼくらの力では、とてもできません。あの容疑者のような、大男たちでなくっちゃあ。」
 やっと、小林君の長話がおわりました。
 波野さんも井上君のおじさんも、しばらくの間だまりこんでいました。ものもいえないほど感じいってしまったのです。しばらくして波野分署長が、ためいきまじりに、口を開きました。
「ああ、わしゃ、はずかしくなったよ。こんな子どもが、これほどの推理をしようなんて。……ああ、明智先生はえらい。こんなりっぱな少年助手を、そだてなすったのだからなあ。」
 それにつづいて、井上君のおじさんも、
「うん、わしは、じつは、少年探偵団なんて子どものあそびごとだと、けいべつしていたが、こういう、えらい団長といっしょにはたらいているのなら、一郎も、しあわせというもんだ。一郎、しっかりやるんだぞ。」
と、ほめそやすのでした。一郎というのは、井上君の名です。
 さて、そのあくる日の夕がたのことです。波野分署長が、こおどりするようなかっこうで、トキワ館へとびこんできました。
「おい、小林君、小林君はいないか。犯人がつかまったぞ。」
 大きな声で、どなりちらすものですから、小林君たち三人はもちろん、おじさんも、番頭さんや女中さんまで、玄関へ集まってきました。
「ほんとうに、つかまったのですか。」
 小林君が、うれしそうに聞きますと、波野さんは、にこにこと、表情をくずしながら、
「うん、つかまった。わしはあれからすぐに、本署に連絡して、非常線をはってもらった。東京の警視庁へも報告した。すると、きょうの昼まえに、あの三人組が、東京で、警視庁の刑事たちにつかまったのだ。
 美術品もすっかりもどった。別荘のご主人も大よろこびじゃ。おい、小林君、百万円はきみのもんだぜ。それから、県の警察署長から表彰状がもらえる。それにも金一封(きんいっぷう)がついているぞ。おかげで、わしも鼻が高いというものじゃ。
 おい、小林君。わかったぞ。きみが、どうしてあの三人組に気がついたか、わかったぞ。『三人』ということじゃ。あの貨車どろぼうは、三人いないとできないということじゃ。ちょうど、その三人づれの東京の客が、あの日の昼間に帰っていった。帰ったと見せかけて、貨車どろぼうの用意にとりかかったのじゃ。
 それにしても、きみがあの三人を、そっと写真にとっておいたのは、機敏(きびん)だったぞ。
 もしあの写真がなかったら、なかなかつかまらぬところじゃった。なんにしても小林君、きみみたいな、ぬけめのない少年を、わしゃ見たことがないぞ。」
 あまりほめられるので、小林君は、てれたように顔を赤くして、
「ええ『三人』だったということもあります。それから、白犬の事件のあった晩、三人の中のひとりが野天ぶろへはいってきて、巨人の腕の話をして、ぼくたちをこわがらせようとしたのです。そのときからぼくは、なんだかへんだなと、思っていました。それで、あの三人に、気をつけていると、いろいろあやしいことがあったのです。」
「うん、そうじゃろう。きみのような少年に、にらまれては、やつらも、運のつきじゃったのう。ワハハハ……。」
 そのとき、どこからか電話がかかってきましたので、井上君のおじさんが、電話口に出ましたが、話を聞きおわると、にこにこして、三人の少年によびかけました。
「おい、吉報(きっぽう)だぞ、別荘のご主人から電話でね、きみたち三人をつれて、すぐにきてくれというんだ。百万円のお礼を、早くわたしたいからってね。……だが、小林君、百万円もらったら、きみはどうするつもりだね。」
「少年探偵団の基金にして、明智先生にあずけます。そうすれば、探偵七つ道具だって、団員みんなに買ってやることができますからね。」
 それを聞くと、井上君とノロちゃんが、両方から、小林団長に、すがりついていきました。
 そして、声をそろえて、
「小林さん、よかったね。よかったねえ。」
といいつづけるのでした。a

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