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塔上的奇术师-真假一郎
日期:2022-01-15 23:56  点击:226

四十面相の変装


 約束の十時に、どんなことがおこったのでしょうか。ですが、ちょっとお待ちください。ここでお話をすこしまえにもどして、書いておかなければならないことがあるのです。
 おなじ日の夕がた、四時半ごろのことです。おとうさんの淡谷さんが社長をやっている会社の社員である一郎青年は、四十面相のことが心配なので、すこしはやく会社を出て、家へ帰ってきました。そして、千歳烏山(ちとせからすやま)の駅でおりて、改札口を出ますと、そこにせびろをきた三十五、六歳の男が待っていて、一郎さんを見ると、つかつかとそばへよってきました。
「淡谷一郎さんですね。わたしはおたくにつめている警視庁のものです。もうあなたがお帰りのころだから、駅へむかえにいってやってくれという、ご主人のおたのみで、やってきました。ご主人は今夜のことを、ひじょうに心配されまして、いっこくもはやくあなたに帰ってほしいとおっしゃるのです。駅から歩いたのでは二十分もかかるから、車でむかえにいってやってくれという、おたのみなのです。」
 警視庁の私服の刑事が、車でむかえにくるというのはへんですが、一郎さんは、そこまでうたがわず、気がるに車に乗ってしまいました。
 乗ってみると、その自動車の後部席には、もうひとりのせびろの男が待っていて、にこにこしながら、「さあどうぞ。」と、席をあけてくれました。そして、あとからは、さっきの男が乗ってきましたので、一郎さんは、ふたりの見しらぬ男に、両方からはさまれた形になりました。
 車はすぐに、走りだしました。
 走りだしたかとおもうと、一郎さんの左のわきばらに、なにかかたいものが、グッとおしつけられました。
「ピストルだ。声をたてるとうつぞッ。しずかにしているんだ。」
 まえから車に乗っていた男が、ひくい声でいいました。
 せまい自動車の中ですから、一郎さんは、どうすることもできません。身うごきすればうたれそうなので、じっとしているほかはないのです。
 するとパッと、目をふさがれました。右がわの男が、てぬぐいのようなもので、一郎さんに目かくしをして、うしろで、かたくむすんでしまったのです。
 それから、こんどはさるぐつわです。ハンカチをまるめたようなものが、口の中へおしこまれ、その上から、やっぱりてぬぐいのようなもので、口から首のうしろにかけて、強くしばられてしまいました。
「ちょっと息ぐるしいが、しばらくのがまんだ。いのちがおしかったら、じっとしているんだよ。」
 そんなことをいいながら、男は一郎さんの両手をねじあげて、うしろにまわし、ほそびきでしばりあげました。
 目かくしをされたので、自動車がどこを走っているのか、すこしもわかりません。むろん、淡谷さんのやしきへいくはずはないのです。いったい、どこへつれていこうというのでしょう。
 それに、このふたりの悪漢はなにものでしょうか。一郎さんは、すこしも心あたりがありません。ひょっとしたら、ああ、ひょっとしたら、この男たちは、怪人四十面相の手下なのではないでしょうか。
 やがて自動車は、さびしい原っぱをとおって、きみょうなたてものの前につきました。一郎さんは、目かくしされているのでわかりませんが、それは、いつかの夕がた、淡谷スミ子ちゃんたちが、こうもり男を見た、あの時計塔のある怪屋(かいおく)でした。
 やっぱりそうでした。こうもり男は四十面相ですから、一郎さんは、四十面相のすみかへつれてこられたのです。自動車からおろされ、石のだんをのぼって、たてものの中へつれこまれました。ぷうんとかびのにおいのする、ひえびえとした、いんきなたてものです。
 廊下を、ぐるぐるまわって、ひとつの部屋におしいれられました。
 そこで、やっと目かくしをとってくれたので、一郎さんは、いそいであたりを見まわしました。
 あれはてた洋室でした。むかしはりっぱな部屋だったのでしょうが、かべ紙はいろあせて、ところどころやぶけていますし、床はじゅうたんもなく、ほこりのつもった板ばりで、小さな窓には、さびた鉄ごうしがはまっています。
 一方に壁だんろがありますが、その中は、くものすだらけで、だんろ棚の上の壁に、はめこみになっている大きな鏡は、水銀がまだらにはげたうえ、いちめんに、大きくひびわれています。
「そいつのなわをといて、服をぬがすんだ。」
 一方の男が、もうひとりの男に命令しました。命令したほうが、首領らしいのです。
 そこで、一郎さんは、いったんなわをとかれ、うわぎとズボンをはぎとられたうえ、もういちどうしろでにしばられ、そのうえ、足までしばられて、板の間にころがされました。

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