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假面恐怖王-蜡像活了
日期:2022-01-30 13:52  点击:240

鉄仮面


「ごらんなさい。これは世界各国の代表者が集まって、戦争をなくする相談をしているところですよ。」
 廊下の右がわがぱっとひろくなって、そこに、りっぱな広間があらわれました。てんじょうからはギラギラひかる水晶玉(すいしょうだま)のついたシャンデリアがさがり、(ゆか)にはまっかなじゅうたんがしきつめられ、壁には大きなだんろ、その上には二メートル四方(しほう)もあるような鏡がはめこみになっています。
 そのりっぱな部屋のまん中に大きなだ円形のテーブルがおかれ、そのまわりに十人ほどの世界の有名な政治家が、おもいおもいの服装で安楽いすにこしかけています。
 その中には、アメリカのアイゼンハワー大統領の顔が見えます。ソ連のフルシチョフ首相の顔が見えます。それから、中国の毛沢東(もうたくとう)主席の顔も、インドのネール首相の顔も、それから日本の岸首相の顔もならんでいます。
 それらのロウでできた顔が、あるものはニヤニヤ笑い、あるものはしかめっつらをし、あるものは口をひらいて、なにかしゃべっているのです。
 人間とおなじ大きさのロウ人形です。顔と手足がロウでできていて、からだには、それぞれの国の服がきせてあります。
 ほんとうに生きているようです。いまにも動きだしそうです。
 ふたりの少年はびっくりして、くいいるように、この場面を見つめました。
「どうです。みんな生きているでしょう。しかし、こんな世界会議は、まだひらかれていません。まだ戦争をなくする相談は、なりたっていないのです。この場面はわたしの空想ですよ。こうして、世界の大きな国の代表者たちが一室に集まって、もう、けっして戦争をしないという、もうしあわせをしたら、どんなにいいかとおもうのです。」
 中曾夫人はそういって、なおも説明をつづけるのでした。
 このロウ人形館の中には、こういう場面が二十以上あります。むろん、政治家ばかりではありません。有名などろぼうや名探偵の人形もあります。アルセーヌ=ルパンが、奇岩城(きがんじょう)の階段をかけおりているところや、シャーロック=ホームズが、悪漢モリアーティとたたかっているところもあります。
 それから、石の牢屋(ろうや)にとじこめられている鉄仮面、たかい塔の屋根を金色(こんじき)のヤモリのように、はいあがっている黄金仮面、夜の銀座を四つんばいになって走っている青銅の魔人、地下室の石の階段をおりてくるどくろ仮面、劇場の廊下にあらわれた笑いの面、そのほか、たくさんの仮面の怪人や、人造人間の場面がつくってあります。
「この道を歩いていけば、それらの場面がみんな見られるのです。では、ゆっくりごらんなさい。わたしは仕事がありますから事務室へかえります。」
 中曾夫人はそういって、二少年を、その場におきざりにしたまま立ちさってしまいました。
 ふたりは、しかたがないので、そのまま、おくのほうへ歩いていきました。
 中曾夫人のいったとおり、つぎつぎと、いろいろな場面がありました。怪盗ルパンや、名探偵ホームズのいる、いくつかの場面もありました。そして、つぎの場面には……、
「あっ、小林(こばやし)さん。」
「あっ、明智(あけち)先生。」
 井上君とノロちゃんは口々にさけんで、その方へ、かけよろうとしました。そこに名探偵明智小五郎(こごろう)と、その助手の小林少年が立っていたからです。小林少年は少年探偵団の団長でもあります。
 かけよろうとすると、すぐに、木のてすりにぶつかりました。明智先生と小林少年は、そのてすりのむこうがわに立っているのです。
 よびかけても、なにもこたえません。こちらを見ようともしません。ただ身動きもしないで、つっ立っているばかりです。
「あっ、これもロウ人形だよ。……おどろいたなあ。先生や小林さんと、そっくりの顔をしている。よくこんなににせたものだなあ。」
 井上君がすっかり感心して、うなるようにいいました。
 それから、すこしいくと、鉄仮面の部屋でした。
 石でくんだ、ふるい牢獄です。たかいところに鉄棒のはまった小さな窓があるきりの、くらい牢屋です。そこに、あの有名な鉄の仮面で顔をつつまれた人物が立っています。
 フランスのルイ十四世の時代ですから、今から三百年近くも昔のことです。バスチーユの牢獄に仮面をかぶせられた罪人がおりました。その罪人は牢獄で病死したのですが、死ぬまで仮面をかぶせられたまま、一度も顔を見せたことがないのです。
 いったい、この仮面の囚人は何者だったのでしょうか。それはだれも知らない秘密でした。フランスの小説家たちは、この秘密をいろいろに想像して鉄仮面の小説を書きました。そのために、いっそう鉄仮面の名は有名になったのです。日本にも二つの鉄仮面の小説がほんやくされています。デュマ原作のものと、ボアゴベ原作のものです。
 井上君とノロちゃんが見ているのは、バスチーユの石牢にとじこめられた鉄仮面です。その前に五十歳ぐらいの、がっしりした男が腰をかがめて、なにかしゃべっているところです。牢番なのでしょう。
 鉄仮面は、口のところがちょうつがいでひらくようになっていて、食事をさせるときには、牢番がかぎで、それをひらいてやるのでした。そうして口をふさいでおくのは、むやみにものをいわせないためなのでしょう。
 井上君もノロちゃんも、「鉄仮面」の小説をよんでいたので、このロウ人形の場面を、いっそう、ものおそろしく感じました。
 ふたりは、その場面のまえに立ちつくして、ながい間ながめていました。
「鉄仮面って、いったい、だれだったのだろうね。」
「王さまの兄弟だったともいうし、大臣だったともいうし、僧正(そうじょう)だったともいうし、まだいろいろの説があるんだよ。とにかく、顔をかくしておかなければならないというのは、世間によく知られた、えらい人だったにちがいないよ。」
 井上君がノロちゃんに話してきかせました。
「あの鉄仮面の中に、どんな顔があるんだろうね。」
「これは人形だから、鉄仮面の中は、からっぽだよ。それとも……。」
 井上君は、そこまでいって、だまってしまいました。
 もしあの鉄仮面の中にロウでつくった人間の顔があるとしたら、それはどんな顔だろうとおもうと、なんだか、こわくなってきたからです。
「つぎの場面へいこうよ」
 井上君はノロちゃんの手をひっぱって、むこうへ歩いていきました。ひとつかどをまがると、そこに、つぎの場面があるのですが、そのかどをまがったとき、ノロちゃんが井上君の手をぐっとひっぱって、あいずをしました。
「あいつに気づかれるといけない。そっと、のぞいてみるんだよ。ほらね、動いているだろう。」
 ノロちゃんは、井上君の耳に口をつけるようにして、ささやきました。
 井上君が、まがりかどから、そっと顔をだして、鉄仮面の場面をのぞいてみますと、そこには、じつにふしぎなことがおこっていたのです。
 ロウ人形の鉄仮面が歩き出したのです。どこにかくしてあったのか、黒いマントのようなものを取り出して肩からはおり、木のてすりをのりこして通路に出ると、そのままスタスタと、むこうへ歩いていくではありませんか。

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