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带电人M-人造月球
日期:2022-01-30 14:19  点击:286

 

大月球(だいげっきゅう)


 警官たちがかけつけてきました。
「ここです。この部屋にはいってかぎをかけました。」
 小林君がそういいますと、警官のひとりが、かぎあなをのぞきましたが、かぎがさしたままになっていて、なにも見えません。
 そのとき部屋の中で、なにかさけぶ声がきこえました。どうも、ふたりの声のようです。するとこの部屋には人がいて、ロボットとあらそっているのでしょうか。
「たすけてくれえ……。」
 その人は、ロボットにひどいめにあわされているようです。
「よし、このドアをやぶるんだっ。」
 警官はそうさけんで、ドシン、ドシンと、からだをドアにぶっつけはじめました。しかし、ドアは、なかなかこわれません。なんども、なんども体あたりをしているうちに、やっとドアのちょうつがいがはずれたので、人びとはドアをおしたおして、中へとびこんでいきました。
 ひとりの背広の男が、開いた窓から、そとをのぞいています。
「どうしたのです。ロボットはどこへいったのです。」
 警官がたずねますと、その男はふりむいて、
「この窓から、中庭へとびおりました。ふしぎです。やつは、たおれもしないでそのまま、あの入口から一階へはいっていきました。」
 空へ風船のようにとびあがるほどのロボットですから、六階からとびおりるくらいへいきなのでしょう。
 それをきくと、ひとりの警官がさけびました。
「よし、ぼくはエレベーターでおっかける。きみはこの電話で、パトカーの応援をたのんでくれ。」
 そしてへやをとびだすと、エレベーターのほうへはしりました。おおぜいのMビルの会社の人たちも、おなじようにエレベーターへいそぎました。
 あとにのこった警官は、電話をかけおわると、これもエレベーターのほうへ、かけだしていきます。
 あたりの部屋からあつまった人たちも、それぞれひきあげてしまい、長い廊下に、人かげが見えなくなりました。
 すると、やぶれたドアからさっきの男が、大きな四角のズックのかばんをさげて、出てきたのです。あたりを見まわして、階段のほうへいそいでいきます。
 小林少年は、廊下のまがりかどに身をかくして、男がでてくるのをまっていました。
 この男があやしいとかんがえたのです。警官がドアをやぶっているあいだに、ロボットの変装をぬいで、ふつうの人間にもどっていたのかもしれないからです。
 いま、その男が大きなかばんをもって出てきたのを見ると、もう、それにちがいないとおもいました。ロボットのからだは、うすい金属でこしらえてあって、それがこまかくおりたためるようにできているとすれば、あのかばんの中におさまってしまうでしょう。プラスチックの頭だって、いくつにも、われるようになっているのかもしれません。
 それに、ロボットの背の高さは二メートルにちかいのですから、プラスチックの頭の下に、人間がはいっていることもできるわけです。
 小林君は、そのあやしい男のあとを、ソッと尾行(びこう)しました。
 男は、エレベーターでは、だれがのっているのかわからないので、あぶないとおもったのでしょう、階段をトコトコおりていきます。小林君にとっては、そのほうがつごうがいいのです。いちども見うしなわずに、Mビルのそとまで尾行することができました。
 男は、そこにならんでいる一台の自動車にのりこみました。運転手はいないようですから、じぶんで運転するのでしょう。
 それを見とどけると小林君も、じぶんの車のほうへはしっていって、のりこみました。
 そして、自動車の追跡がはじまったのです。
 男の車は池袋(いけぶくろ)から豊島園(としまえん)をすぎて、練馬(ねりま)区の畑の中へはいっていきました。もうそのころは、日がくれて、あたりはまっくらでした。
 広い畑の中の道をしばらくいくと、どこかの会社の建築用地なのでしょう、長い板べいのつづいているところにでました。
 男の車は、その板べいのきわでとまり、男はへいについている戸をひらいて、中へはいっていったようです。
 小林君も、五十メートルほどへだたったところで車をおりると、ソッと、男の車のほうへちかづいていきました。
 男の車は、ヘッドライトをけしてしまいましたし、そのへんには電灯もないので、あたりはまっくらでしたが、星空のうすあかりで、長いへいがぼんやりと見えています。
 男のはいったへいの戸のそとまでいって、じっと耳をすましていますと、スーッと、音もなく戸がひらき、そこに、男がつったっていました。
 小林君はびっくりして、身をかくそうとしましたが、もうまにあいません。
「ハハハ……、まっていたんだよ。きみが車で尾行していることも、ちゃんとしっていたのさ。きみは、やっぱりうまくちえをはたらかせたね。おまわりさんより頭がいいぞ。」
 もう、こうなっては、しかたがありません。小林君もどきょうをすえました。
「じゃあ、きみがロボットにばけていたんだね。」
「そうだよ、ロボットの衣しょうはこまかくおりたたんで、このかばんの中にいれてある。まさか、あんなに早くロボットが人間にかわるなんて、おもいもよらないものだから、おまわりさんたちも、すっかりだまされてしまったのさ。それを、きみだけが見やぶったのは、さすがに明智探偵の弟子だよ。」
 こんなやつにほめられても、いっこうにうれしくありません。
「じゃあ、きみが、さっき電話をかけてきた電人Mなのかい。」
「いや、そうじゃない、電人Mというのは、おれたちのおかしらだ、おれはその部下なのさ、電人Mがどんなにおそろしいおかただか、いまに、きみにもわかるときがくるだろうよ。」
「それにしても、きみは、ぼくがつけてくるのをしりながら、なぜにげなかったの。ぼくをここへおびきよせたのは、なんのためなんだい。」
「それは、おもしろいものを見せてやろうとおもったからさ。つまり、宣伝のためだよ。」
「えっ、宣伝のためだって。」
「そうさ、宣伝さ。そのために、おれたちは電光ニュースや、広告塔にいたずらをしたり、印刷した紙をばらまいたり、火星人のような怪物をあらわしたり、ロボットを空へとばしたりしているんだ。」
「ロボットといえば、きょうのきみのロボットと、あの空へとんだロボットとは、つくりかたがちがうんだね。」
「そうだよ。空へとんだやつは、ビニールの風船だよ。ロボットのような形にして、色をぬってごまかしてあるのさ。水素がいっぱいつめてあるので、鉄の靴さえぬげば、とびあがるようになっているのだ。そのうえ、胸のところは、防弾(ぼうだん)チョッキのように、軽いじょうぶな金属がついているのさ。」
「じゃあ、あの中に人間がはいっていたの。」
「いや、人間なんかはいってやしない。はいっていたら、あんなにとべないよ。ただの風船さ。」
「それじゃ、どうして、ものを言ったんだい。」
「ロボットの胸に、無線電話のラウド・スピーカーが仕掛てあって、遠くから、おれたちの仲間がしゃべっていたんだよ。あそこのコンクリート塀の中からね。ロボットを歩かせるのも、重い靴をぬがせるのも、みんな無線操縦でやっていたのさ。」
「タコのような火星人は?」
「中に人間がはいっていたんだよ。あれもビニールでこしらえたものだが、じつにうまくできている。絵にかいた火星人そっくりだからね。六本の足のうち四本は人間の足と手がはいっているが、あとの二本は、ただブラン、ブランと、さがっているだけなのさ。」
 小林君はこんなに、なにもかも、打ち明けてしまって、いったい、どうする気だろうと、(あや)しまないではいられませんでした。
「で、そんなことをやって、なにを宣伝しようとしたんだい。」
「わかってるじゃないか。月世界旅行へさそったのさ。」
「えっ、月世界旅行だって?」
「ハハハハ……、きみは、まだ気がつかないのかい。ほら、あそこを見てごらん。」
 男はそう言って、塀の中の(やみ)を、指さしました。しかし、まっくらで、なにがあるのか、よくわかりません。
「ボーッと見えるだろう。でっかいものが。」
 そう言われると、星空の下に、大きな、まるい山のようなものが、向こうに、そびえています。
 じっと見つめていますと、だんだん、その形がわかってきました。
 それは、地球儀(ちきゅうぎ)を何万倍にもしたような、まんまるい、でっかいものでした。コンクリートでできているのでしょう。さしわたし五十メートルもあるような、おそろしく大きな球です。
 よく見ると、その表面に、たくさんのでこぼこがあります。ああ、わかった。望遠鏡で見た月の表面とそっくりです。さしわたし五十メートルの月世界が、闇の中にそびえていたのです。
「わかったかね。つまり地上の月世界さ。あの月世界にむかって、ロケットで旅行をするのだ。ロケットの方は、まだここに持ってきてないが、見物人はそのロケットにはいるのさ。そして、月世界へとぶんだよ。」
 とほうもない見世物です。
 それにふさわしく、とほうもない宣伝をやったものです。
 ああ、この月世界旅行の見世物から、いったい、どんなことが、起こってくるのでしょうか。

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