ふたりは、
小さな
声で
話をしていたが、ついに、かごの
中の
鳥に
向かって、
話しかけたのです。
「どうして、
人間などに
捕らえられたんですか?」
「みんなそう
思うでしょう。あなたがただって、もうすこしここにいてごらんなさい、いつか
私のようになってしまいます。
私はもう、このかごの
中に、二
年もいます。しばらく
仲間の
声を
聞かなかったのに、
今日めずらしくあなたがたの
声を
聞いて、
自分も、つい
大きな
声を
出して、お
呼びもうしたのです。」と、かごの
鳥は、
答えました。
「しかし、
人間は、あなたを
大事にしているようじゃありませんか。」
「それは、
餌や、
水には、
気をつけてくれます。ときどきは、
青い
菜などをいれてくれます。しかし、
自分で、ほしいものを
気ままに、
探すという
喜びもなければ、また、
自由というものもありません。あのように、
空を
飛んだ、
私の
翼は、もう
飛ぶ
用がなくなってしまいました。」
「
気ままに
飛んでいる
私たちには、
自由のありがたみが、ほんとうにわかりませんが、こちらは、いろいろの
花があり、それに、
暖かで、いいところではありませんか。」
「いいえ、あの
風の
寒い、
空の
青い、
北のふるさとが、いちばんいいところです。
人間は、
器械を
持っています。それを
使って、
飛んでいる
鳥をうつこともできれば、また、
巧みな
方法で
生擒にすることもできます。あなたがたも、はやく、
見つからないうちに、お
帰りなさい。」と、かごの
鳥は、いいました。
「どうかして、そのかごの
中から、
逃げ
出すことはできませんか……。」と、ふたりは、
哀れな
鳥にささやいたのであります。
かごの
鳥は、うらめしそうに、こちらを
見ていたが、
「
逃げ
出しても、
私には、もはや、あの
山を
越すだけの
力がありません。それより、あなたたちは、はやく、ふるさとへお
帰りなさい。
夏になると、この
国は、とても
暑いのです。」と、いいました。
二
羽の
小鳥は、なるほどと
考えました。そして、
急に、ふるさとがなつかしまれたのであります。それから、まもなく、ふるさとを
指して
帰りました。ふたりは、きたときのように、
途中幾たびも
木にとまって
休みました。
「あの
国にすんだにしても、みんな
生擒にされたり、
殺されたりするものばかりでもないだろう。」と、ひとりがいいますと、
「
美しい
花の
咲くところや、にぎやかなところにばかり、
私たちの
幸福があると
思ったのが、まちがっていたのだ。やはり、
平和で、
自由に
暮らせるところが、いちばんいいのだ。」と、ひとりが
答えました。
ふるさとに
帰ると、すっかり
春になっていて、
清らかな、
香りの
高い、
花が、
南の
国ほど、
種類はたくさんなかったけれど、
山や、
林に、
咲いて、
谷川の
水が、
朗らかにささやいていました。
年とった
鳥たちは、ふたりの
帰ったのを
喜びました。そして、ふたりは、
昔の
生活に
返ったが、ときどき
南の
方の
空をながめて、あの
空の
下にいる
不幸な
仲間の
身の
上を
考えたのでした。