二人が近づくと「婦人レディ」が「合あい言こと葉ばは」と聞いた。
「えーと――」とハリー。
二人ともまだグリフィンドールの監かん督とく生せいに会っていないので、新学期の新しい合言葉を知らなかった。しかし、すぐに助け舟がやってきた。後ろのほうから急ぎ足で誰かがやってくる。振ふり返るとハーマイオニーがこっちにダッシュしてくる。
「やっと見つけた いったいどこに行ってたの バカバカしい噂うわさが流れて――誰かが言ってたけど、あなたたちが空飛ぶ車で墜つい落らくして退たい校こう処しょ分ぶんになったって」
「ウン、退校処分にはならなかった」ハリーはハーマイオニーを安心させた。
「まさか、ほんとに空を飛んでここに来たの」
ハーマイオニーは、まるでマクゴナガル先生のような厳きびしい声で言った。
「お説せっ教きょうはやめろよ」ロンがイライラして言った。
「新しい合あい言こと葉ば、教えてくれよ」
「『ミミダレミツスイ』よ。でも、話を逸そらさないで――」
ハーマイオニーもイライラと言った。
しかし、彼女の言葉もそこまでだった。「太った婦人レディ」の肖しょう像ぞう画ががパッと開くと、突とつ然ぜんワッと拍はく手しゅの嵐あらしだった。グリフィンドールの寮りょう生せいは、全員まだ起きている様よう子すだった。丸い談だん話わ室しつ一いっ杯ぱいに溢あふれ、傾いたテーブルの上や、ふかふかの肱ひじ掛かけ椅い子すの上に立ち上がったりして、二人の到とう着ちゃくを待っていた。肖像画の穴のほうに何本も腕うでが伸びてきて、ハリーとロンを部屋の中に引ひっ張ぱり入れた。取り残されたハーマイオニーは独ひとりで穴をよじ登ってあとに続いた。
「やるなぁ 感かん動どう的てきだぜ なんてご登とう場じょうだ 車を飛ばして『暴あばれ柳やなぎ』に突っ込こむなんて、何年も語かたり草ぐさになるぜ」リー・ジョーダンが叫さけんだ。
「よくやった」
ハリーが一度も話したことがない五年生が話しかけてきた。ハリーがたったいま、マラソンで優ゆう勝しょうテープを切ったかのように、誰かが背中をポンポン叩たたいた。フレッドとジョージが人ひと波なみをかき分けて前のほうにやってきて、口をそろえて言った。