「このマンドレイクはまだ苗ですから、泣き声も命取りではありません」
先生は落ち着いたもので、ベゴニアに水をやるのと同じように、あたりまえのことをしたような口ぶりだ。
「しかし、苗でも、みなさんを間違いなく数時間気き絶ぜつさせるでしょう。新学期最初の日を気を失ったまま過ごしたくはないでしょうから、耳当ては作さ業ぎょう中ちゅうしっかりと離はなさないように。後片づけをする時間になったら、私からそのように合あい図ずします」
「一つの苗なえ床どこに四人――植うえ換かえの鉢はちはここに十分にあります。――堆たい肥ひの袋ふくろはここです。――『毒どく触しょく手しゅ草そう』に気をつけること。歯が生はえてきている最さい中ちゅうですから」
先生は話しながら刺とげだらけの暗あん赤せき色しょくの植物をピシャリと叩たたいた。するとその植物は、先生の肩の上にそろそろと伸ばしていた長い触手を引っ込こめた。
ハリー、ロン、ハーマイオニーのグループに、髪かみの毛がくるくるとカールしたハッフルパフの男の子が加わった。ハリーはその子に見覚えがあったが、話したことはなかった。
「ジャスティン・フィンチ‐フレッチリーです」
男の子はハリーと握あく手しゅしながら、明るい声で自じ己こ紹しょう介かいした。
「君のことは知ってますよ、もちろん。有名なハリー・ポッターだもの……。それに、君はハーマイオニー・グレンジャーでしょう――何をやっても一番の……ハーマイオニーも握あく手しゅに応おうじながらにっこりした。それから、ロン・ウィーズリー。あの空飛ぶ車、君のじゃなかった」
ロンはにこりともしなかった。「吼ほえメール」のことがまだ引っかかっていたらしい。
「ロックハートって、たいした人ですよね」
四人でそれぞれ鉢に、ドラゴンの糞ふんの堆肥を詰つめ込みながらジャスティンが朗ほがらかに言った。