「ものすごく勇ゆう敢かんな人です。彼の本、読みましたか 僕ぼくでしたら、狼おおかみ男おとこに追い詰められて電話ボックスに逃げ込むような目に遭あったら、恐きょう怖ふで死んでしまう。ところが彼ときたらクールで――バサッと――素す敵てきだ」
「僕、ほら、あのイートン校に行くことが決まってましたけど、こっちの学校に来れて、ほんとにうれしい。もちろん母はちょっぴりがっかりしてましたけど、ロックハートの本を読ませたら、母もだんだんわかってきたらしい。つまり家族の中にちゃんと訓くん練れんを受けた魔法使いがいると、どんなに便べん利りかってことが……」
それからは四人ともあまり話すチャンスがなくなった。耳当てをつけたし、マンドレイクに集中しなければならなかったからだ。スプラウト先生の時はずいぶん簡かん単たんそうに見えたが、実じっ際さいにはそうはいかなかった。マンドレイクは土の中から出るのをいやがり、いったん出ると元に戻りたがらなかった。もがいたり、蹴けったり、尖とがった小さな拳こぶしを振ふり回したり、ギリギリ歯は軋ぎしりしたりで、ハリーはとくにまるまる太ったのを鉢に押おし込むのに優ゆうに十じっ分ぷんはかかった。
授じゅ業ぎょうが終わるころにはハリーも、クラスの誰もかれも、汗あせまみれの泥どろだらけで、体があちこち痛んだ。みんなだらだらと城まで歩いて戻り、さっと汚れを洗い落とし、それからグリフィンドール生せいは「変へん身しん術じゅつ」のクラスに急いだ。
マクゴナガル先生のクラスはいつも大変だったが、今日はことさらに難むずかしかった。去年一年間習ったことが、夏休みの間にハリーの頭から溶とけて流れてしまったようだった。コガネムシをボタンに変える課か題だいだったのに、ハリーの杖つえをかいくぐって逃げ回るコガネムシに、机の上でたっぷり運動させてやっただけだった。
ロンのほうがもっとひどかった。スペロテープを借かりて杖をつぎはぎしてみたものの、もう杖は修しゅう理りできないほどに壊こわれてしまったらしい。とんでもない時にパチパチ鳴ったり、火花を散らしたりした。ロンがコガネムシを変へん身しんさせようとするたびに、杖は濃こい灰色の煙でもくもくとロンを包つつみ込こんだ。煙は腐くさった卵たまごの臭においがした。煙で手元が見えなくて、ロンはうっかりコガネムシを肘ひじで押しつぶしてしまい、新しいのをもう一匹もらわなければならなかった。マクゴナガル先生は、ご機き嫌げん斜ななめだった。