「いったい何事かな いったいどうしたかな」
ギルデロイ・ロックハートが大おお股またでこちらに歩いてきた。トルコ石色のローブをひらりとなびかせている。
「サイン入りの写真を配っているのは誰かな」
ハリーが口を開きかけたが、ロックハートはそれを遮さえぎるようにハリーの肩にさっと腕うでを回し、陽よう気きな大声を響ひびかせた。
「聞くまでもなかった ハリー、また逢あったね」
ロックハートに羽は交がい締じめにされ、屈くつ辱じょく感かんで焼けるような思いをしながら、ハリーはマルフォイがニヤニヤしながら人ひと垣がきの中にするりと入り込こむのを見た。
「さあ、撮とりたまえ。クリービー君」ロックハートがコリンににっこり微笑ほほえんだ。
「二人一いっ緒しょのツーショットだ。最高だと言えるね。しかも、君のために二人でサインしよう」
コリンは大おお慌あわてでもたもたとカメラを構かまえ写真を撮った。その時ちょうど午後の授じゅ業ぎょうの始まりを告つげるベルが鳴った。
「さあ、行きたまえ。みんな急いで」
ロックハートはそうみんなに呼びかけ、自分もハリーを抱かかえたまま城へと歩きだした。ハリーは羽交い締めにされたまま、うまく消え去る呪じゅ文もんがあればいいのにと思っていた。
「わかっているとは思うがね、ハリー」
城の脇わきのドアから入りながら、ロックハートがまるで父親のような言い方をした。
「あのお若いクリービー君から、あそこで君を護まもってやったんだよ――もし、あの子が私わたしの写真も一緒に撮るのだったら、君のクラスメートも、君が目立ちたがっていると思わないでしょう……」
ハリーがモゴモゴ言うのをまったく無む視しして、ロックハートは廊ろう下かに生徒がずらりと並んで見つめる中を、ハリーを連れたままさっさと歩き、そのまま階段を上がった。