「さあ――気をつけて 魔法界の中でもっとも穢けがれた生いき物ものと戦う術じゅつを授さずけるのが、私わたくしの役目なのです この教室で君たちは、これまでにない恐ろしい目に遭あうことになるでしょう。ただし、私わたくしがここにいるかぎり、何物も君たちに危き害がいを加えることはないと思いたまえ。落ち着いているよう、それだけをお願いしておきましょう」
ハリーはつい吊つり込まれて、目の前に積み上げた本の山の脇わきから覗のぞき、籠をよく見ようとした。ロックハートが覆いに手をかけた。ディーンとシェーマスはもう笑ってはいなかった。ネビルは一番前の席せきで縮ちぢこまっていた。
「どうか、叫さけばないようお願いしたい。連れん中ちゅうを挑ちょう発はつしてしまうかもしれないのでね」
ロックハートが低い声で言った。
クラス全員が息を殺した。ロックハートはパッと覆おおいを取り払はらった。
「さあ、どうだ」ロックハートは芝しば居いじみた声を出した。
「捕とらえたばかりのコーンウォール地方のピクシー小しょう妖よう精せい」
シェーマス・フィネガンはこらえきれずにプッと噴ふき出した。さすがのロックハートでさえ、これは恐きょう怖ふの叫さけびとは聞こえなかった。
「どうかしたかね」ロックハートがシェーマスに笑いかけた。
「あの、こいつらが――あの、そんなに――危き険けん、なんですか」
シェーマスは笑いを殺すのに、咽むせ返った。
「思い込こみはいけません」
ロックハートはシェーマスに向かってたしなめるように指を振ふった。
「連れん中ちゅうは厄やっ介かいで危険な小こ悪あく魔まになりえますぞ」
ピクシー小妖精は身みの丈たけ二十センチぐらいで群ぐん青じょう色いろをしていた。尖とんがった顔でキーキーと甲かん高だかい声を出すので、インコの群むれが議ぎ論ろんしているような騒さわぎだった。覆いが取り払われるや否いなや、ペチャクチャしゃべりまくりながら籠かごの中をピュンピュン飛び回り、籠をガタガタいわせたり、近くにいる生徒にあっかんべーをしたりした。