「それじゃ、ミセス・ノリスは」ロンが小声で急せき込こんで聞いた。
ハリーは考え込んだ。ハロウィーンの夜の場面を頭に描えがいてみた。
「水だ……」ハリーがゆっくりと答えた。「『嘆なげきのマートル』のトイレから水が溢あふれてた。ミセス・ノリスは水に映うつった姿を見ただけなんだ……」
手に持った紙切れに、ハリーはもう一度、食い入るように目を通した。読めば読むほど辻つじ褄つまが合ってくる。
「致ち命めい的てきなものは、雄おん鶏どりが時をつくる声」ハリーは読み上げた。
「ハグリッドの雄鶏が殺された 『秘ひ密みつの部へ屋や』が開かれたからには、『スリザリンの継けい承しょう者しゃ』は城の周辺に、雄鶏がいてほしくない。『蜘く蛛もが逃げ出すのは……前まえ触ぶれ』何もかもぴったりだ」
「だけど、バジリスクはどうやって城の中を動き回っていたんだろう」ロンはつぶやいた。「とんでもない大だい蛇じゃだし……誰かに見つかりそうな……」
「パイプだ」ハリーが言った。「パイプだよ……ロン、やつは配はい管かんを使ってたんだ。僕には壁かべの中からあの声が聞こえてた」
ロンは突とつ如じょハリーの腕うでをつかんだ。
「『秘密の部屋』への入口だ」ロンの声が嗄かすれている。「もしトイレの中だったら もし、あの――」
「――『嘆きのマートル』のトイレだったら」とハリーが続けた。
信じられないような話だった。体中を興こう奮ふんが走り、二人はそこにじっと座っていた。
「……ということは」ハリーが口を開いた。
「この学校で蛇語を話せるのは、僕だけじゃないはずだ。『スリザリンの継承者』も話せる。そうやってバジリスクを操あやつってきたんだ」
「これからどうする」ロンの目が輝かがやいている。「すぐにマクゴナガルのところへ行こうか」
「職しょく員いん室しつへ行こう」ハリーが弾はじけるように立ち上がった。「あと十分で、マクゴナガル先生が戻もどってくるはずだ。まもなく休きゅう憩けい時間だ」