「ウィーズリー、君の根とマルフォイのとを取り替かえたまえ」
「先生、そんな――!」
ロンは十五分もかけて、慎しん重ちょうに自分の根をきっちり同じにそろえて刻んだばかりだった。
「いますぐだ」
スネイプは独どく特とくの危き険けん極きわまりない声で言った。
ロンは見事に切りそろえた根をテーブルの向こう側のマルフォイへぐいと押しやり、再びナイフをつかんだ。
「先生、それから、僕ぼく、この『萎しなび無花果いちじく』の皮をむいてもらわないと」
マルフォイの声は底そこ意い地じの悪い笑いをたっぷり含んでいた。
「ポッター、マルフォイの無花果をむいてあげたまえ」
スネイプは、いつものように、ハリーのためだけにとっておきの、憎しみのこもった視線しせんを投げつけた。
ハリーはマルフォイの「萎び無花果」を取り上げ、ロンのほうはさっき台無だいなしにした根を自分が使うはめになり、何とかしようとしていた。ハリーはできるだけ急いで無花果の皮をむき、一ひと言ことも言わずにテーブルの向こうのマルフォイに投げ返した。マルフォイはいままでよりいっそうニンマリしていた。
「君たち、ご友人のハグリッドを近ごろ見かけたかい?」マルフォイが低い声で聞いた。
「君の知ったこっちゃない」ロンが目も合わさずに、ぶっきらぼうに言った。
「気の毒どくに、先生でいられるのも、もう長いことじゃあないだろうな」マルフォイは悲しむふりが見え見えの口く調ちょうだ。「父ちち上うえは僕の怪け我がのことを快く思っていらっしゃらないし――」
「いい気になるなよ、マルフォイ。じゃないと本当に怪我させてやる」ロンが言った。
「――父上は学校の理り事じ会かいに訴うったえた。それに、魔ま法ほう省しょうにも。父上は力があるんだ。わかってるよねぇ。それに、こんなに長引く傷きずだし――」
マルフォイはわざと大きなため息をついてみせた。
「僕の腕うで、果たして元どおりになるんだろうか?」
「そうか、それで君はそんなふりをしているのか」
ハリーは怒りで手が震ふるえ、手元が狂って、死んだイモムシの頭を切り落としてしまった。