「それでは、最初の問題ですが、まね妖怪のボガートとはなんでしょう?」
ハーマイオニーが手を挙あげた。
「形けい態たい模写もしゃ妖よう怪かいです。私たちが一番怖こわいと思うのはこれだと判はん断だんすると、それに姿を変えることができます」
「私でもそんなにうまくは説明できなかったろう」
ルーピン先生の言葉で、ハーマイオニーも頬ほおを染そめた。
「だから、中の暗がりに座り込こんでいるまね妖怪は、まだ何の姿にもなっていない。箪笥の戸の外にいる誰かが、何を怖がるのかまだ知らない。まね妖怪が独ひとりぼっちのときにどんな姿をしているのか、誰も知らない。しかし、私が外に出してやると、たちまち、それぞれが一番怖いと思っているものに姿を変えるはずです」
「ということは」
ネビルが怖くてしどろもどろしているのを無む視しして、ルーピン先生は話を続けた。
「つまり、初めっから私たちのほうがまね妖怪より大変有利な立場にありますが、ハリー、なぜだかわかるかな?」
隣となりのハーマイオニーが手を高く挙げ、爪つま先さき立だちでぴょこぴょこ跳とび上がっているそばで質問に答えるのは気が引けたが、それでもハリーは思いきって答えてみた。
「えーと――僕ぼくたち、人数がたくさんいるので、まね妖怪はどんな姿に変身すればいいかわからない?」
「そのとおり」
ルーピン先生がそう言い、ハーマイオニーはちょっぴりがっかりしたように手を下ろした。
「まボねガ妖ー怪ト退治たいじをするときは、誰かと一いっ緒しょにいるのが一番いい。向こうが混こん乱らんするからね。首のない死体に変身すべきか、人じん肉にくを食らうナメクジになるべきか? 私はまね妖怪がまさにその過あやまちを犯おかしたのを一度見たことがある。――一度に二人を脅おどそうとしてね、半はん身しんナメクジに変身したんだ。どうみても恐ろしいとは言えなかった。